コンラッドが出発するまでのカウントダウンが始まった。 コンラッドは必要な荷物を既に纏め終えているし、グウェンの下にはシマロン(小も合わせて)に散っていた諜報員達が最新の情報を抱えてぞくぞくと戻ってきている。戻ってこれない諜報員達からは鳩が送られてきている。 ここ数日はその情報を囲んで、グウェン、ギュンター、コンラッド、村田、そして何度もシマロンに潜入しているヨザックが、額を寄せあって色々と話し込んでいた。かなり専門的に高度な、そして時間の無駄が許されない話し合いだということで、悔しいけどおれはこの中に入れてもらえない。おれに説明する間も惜しい、ってことなんだな。ちなみにそれはヴォルフも同じだ。一応納得したおれとは違って、おれと同次元のガキ扱いされ、この会議に入れてもらえなかったヴォルフの怒りはすごかった。けど、きっぱり無視された。その点、年長組(村田もいるけど)はこうと決めたら容赦がない。 おれは理解できる。そう、確かに理解できる。もしおれが参加していたら、きっとイロイロ分からないことだらけで、質問ばっかりして、時間を無駄に費やしてしまうだろう。 理解できるけどー……理屈を頭で理解するのと感情は別だ。 ものすごく悔しい。内心はヴォルフと一緒だ。だけどその場に乗り込んで、皆の邪魔をすることはしない。コンラッドの命が懸かってるんだから。この悔しさは……自分の未熟さにぶつけるしかないんだ。 おれは王様として、もっともっと成長しなくちゃダメだ! でもその前に。 おれは部屋のベランダに立ち、暮れなずむ夕焼け空を見つめて考えていた。 どうすれば、コンラッドの実質お嫁さん、実質ご夫婦になれるのか。 ぶっちゃけ、どうすれば百戦錬磨の呼び声も高いコンラッドを、ガキのおれがその気にさせられるのか! 「……その気、だってー……わはー」 恥ずかしい。心の声ですらこんなに恥ずかしい。………ダメじゃん、これじゃ。 だって、おれ。 「とことん経験不足だしなー」 そりゃおれだって健康な男子高校生だし? そういうのに興味津々のお年頃だし? クラスメートとか草野球で仲良くなった連中だって似たようなモンだし? 知識っつーか、耳学問っつーか、情報だけはイロイロ実沢山にあるわけだ。 あくまで「健全な男子高校生」の興味の範囲内だけどさ。 でも、実際におれが直面したこの状況は全然違うだろ? おれとコンラッドがその……する時って……どうすればいい、わけ? おれはコンラッドに、何をどうすれば良いわけ? おれ。 ……結局何にも知らないんだ。 コンラッドは経験豊富だけど女の人しか相手にしたことのない男だし、おれも男……って言っていいよな? だっておれが女なのって内臓だけの話だし。……あれ? 違うのかな……? もしそうなら子供を作る時ってどうなるんだ? あれ? あれ? だってアレって……。おやあ? ……今さら何考えてんだ、おれ。ああ、もっとギーゼラにきちんと聞いておけばよかった。ギーゼラだって分からないことがあったら遠慮なく聞いて下さいって言ってたのに……。 「……ギーゼラ……か」 聞いてみようか? さりげなく。おれみたいな身体の場合、どうなるのかって。でも。 「聞けるか!?」 そんな恥ずかしいコト! はあ、とため息が漏れる。 この段階でこんなじゃ、コンラッドが出発するまでにお嫁さんなんて絶対無理だ。 ……村田の言うことも分かるんだ。 こういうことは焦ってするもんじゃない、だろうってことは。 おれはー……焦ってる、のかな? やっぱり? ただ……。 おれたちは何があろうと引き裂かれることのない関係なんだって、実感したい、のかもしれない。 たとえしばらくの間離れ離れになったって、必ずまた一緒にならなきゃならないんだって……。 永遠に離れたまんまなんて、おれ達にはあり得ないだって。 それを心と身体の両方で実感したいのかもしれない。 そしてやっぱり……シマロンの王女様の存在が……怖い、んだろうな。 コンラッドが心変わりするとは思わないけど、おれの知らない土地でおれの知らない時間を共に過ごす人がいて、その人達のことをやっぱり何も知らない、というのはかなりキツい。 コンラッドはおれのものだって……自信を持って送り出したい……。 「……よし!」 うだうだしてても仕方がない! もう時間がないんだ。 おれはギーゼラを探しに部屋を出ることにした……。 そうして迎えた、コンラッド出発の前夜。 おれは身体に「あるもの」を纏って、城の中を走っていた。 コンラッドはいつも通り「お休みなさい」と笑顔で言った。まるで明日も明後日もいつも通り側にいるような顔で。そしてヨザックとクラリスが微妙に離れた位置で、何を見てるのかさっぱり分からない方向に顔を向けている間に、いつも通りキスをしてくれた。 おれの唇に、それから額と頬に触れるコンラッドの唇。 その感触を抱き締めるように、おれはベッドに入りー……たっぷり時間を置いた後、部屋を抜け出した。 部屋の扉がいきなり開いた時、衛兵さん達がぱっと振り返ったけれど、おれが部屋を飛び出したのには気づかなかった。扉が「誰もいないのに」開いたことと、空気が変な感じに動いたことに、不思議そうに首を捻っている。 おれがコンラッドの部屋に向かう間も、何人かの人とすれ違った。でも誰もおれが横を通り過ぎたことに気づかなかった。 そしてコンラッドの部屋の前。 そっとノックをしようと手を上げた時、「ユーリ?」という声と共に扉が開いた。 「………あ、れ……?」 コンラッドも首を捻っている。 おれはその傍をさっと抜けて部屋に飛び込んだ。あり得ない気配に、コンラッドがその場からとび退る。 「これは……!?」 コンラッドの表情が一気に厳しくなった。 「コンラッド!」 呼べば、コンラッドの顔がお間抜けなくらいきょとんとなって、それから慌ててきょろきょろと周囲を見回す。 「じゃーん!」 そこでおれはようやく纏っていたものを身体から取り去った。それまで透明だったものが、いきなりパールホワイトの光沢のあるマントに変化する。 「ほんとはハ○ー・ポ○○ーと呼ばれたいけど実態は3本の毛もないオ○Qマント〜! 頭から被ればあなたもいきなり透明人間に! アニシナさんと村田の共同制作です! どう? おれの姿、全然見えなかっただろ?」 しばらく呆気に取られていたコンラッドの身体から、やっと力が抜けた。 「……びっくりしました。俺がユーリの気配を間違うはずはないのにと……。それ、マント、ですか?」 「そうそう。こんなのがあるならさっさと出せって感じだよねー。あの2人で作ってたんだって。村田が貸してくれたんだ。おれが……コンラッドと2人で過ごしたいって言ったらさ……」 そうでしたか、と言いながら歩み寄ってきたコンラッドが、マントを手に取った。コンラッドが手を当てた部分が透明になって、同時にコンラッドの手も見えなくなる。 「すごいですね、これ。猊下の協力があったとはいえ、アニシナがこれだけのものを成功させるなんて、ちょっと信じられないと言うか……」 「うん。でもこれ、失敗作なんだ」 は? とコンラッドが驚いたようにおれを見る。 「これさ、国外で仕事する諜報部員達を護るために開発したものなんだって。でもさ、ダメなんだよ。これ……1回切りしか使えない、使い捨てマントなんだ。それも透明でいられるのは11分27秒だけ」 11分27秒、と何かを確かめるように呟いて、コンラッドが苦笑した。 「それはまた、微妙というか何というか……まあ、少なくとも諜報活動を助けるものにはなりませんね」 「だよねー。どこかに忍び込んでも、たった11分27秒で姿が見えちゃう訳だから、はっきり言って役にたたないよね。せいぜい……厨房に忍び込んで何か摘んでくるとか、執務室から逃げ出すために使うとか……」 「わざわざこんなものを使って厨房に忍び込まなくても……。つまり、悪戯に使うくらいしか用をなさない、と」 「そうなんだ。でもおれがコンラッドの部屋に忍び込むには役に立ったよね。誰も気づかないわけだしさ。おれにとっては、これで充分お役立ちアイテムだったよ。ちなみに帰りの分もちゃんと用意してます。未開封の場合、消費期限は無いんだって」 なるほど、と笑うと、コンラッドは「お茶をいれましょう」と言った。 「来て頂けて嬉しいです。このまま出発してしまうのは、ちょっと寂しいなと思っていたので」 「ほんと? ホントにおれと居たいって思ってくれてた?」 「もちろんですよ、ユーリ」 そう言ってお茶の準備をしようとしたコンラッドが、「あ」と顔を上げた。 「お茶だと眠れなくなってしまうかもしれませんね。ミルクを温めてきましょうか? その方が……」 「コンラッド」 「はい?」 傍に立って、カップを手にしようとしていたコンラッドの腕に手を置く。置いて、ぎゅっと握る。 「コンラッド。……あの、な……おれ……今夜来たの……な……。あの………」 「ユーリ? どうしました?」 「あの……だから、その………」 「……ユーリ?」 「お、おれ……」 ドキドキと胸が鳴る。もしかしたら、告白した時より興奮度が高いかもしれない。心臓が跳ね回る。 でも。でもでもでも。 「おれっ」 当って砕けろ、おれ! いや、砕けちゃダメだけど、とにかく当たれ! 勢いで突っ走って壁をぶち破るのがおれの身上だろ!? 「こここ、こっ、今夜っ、おれをっ、コンラッドのっ、お、おおお、お嫁さんにっ、して下さいっ!!」 あらためて見上げれば、コンラッドが見たことないくらい目を大きく瞠いて、おれを凝視していた。 「ユー…リ……?」 信じられないという顔でおれを見つめる顔を見返す。というか、睨み返す。 コンラッドはおれを呆然と見つめてて、何だかそれは、おれが本当におれなのか、いきなり不安になったみたいな妙に疑わしい視線だった。 「……ユーリ。そういう……誤解を生むような言葉は……」 「誤解じゃない!」 コンラッドの瞳に厳しい光が加わった。 「……誤解じゃ、ない……」 一気に弱々しくなる自分の声が悔しい。おれは消えそうな勇気を掻き集めて、気を抜くと俯きそうになる顔をキッと上げた。 「おれは……っ」 「ユーリ!」 コンラッドの本気の声に、身体がぴくんっと跳ねた。 「ユーリ……」 ほう、とため息をつき、困った、という様子で額に手を当て、それからコンラッドは少しだけ視線を緩めておれを見た。 何も言わない、言えないまま、じーっと見つめるおれに苦笑を浮かべると、ゆっくり近づいてくる。 すぐに距離を詰め、前に立ったコンラッドが、手を伸ばしておれの頭を撫でた。 「ユーリ。……そのようなことは軽々しく口にしてはなりません。あなたのような貴い身分の方が、容易く身体を投げ出すような真似をするなど、絶対に許されません。お願いですから……」 「コンラッドは……」 あまりに「大人」なセリフに、何だか哀しくなってきてしまう。 「……おれを愛してるって……言った。あれは……嘘……?」 「嘘じゃありません!」 心外だと、コンラッドの声のトーンが上がる。 「あなたに、もうずっと恋し続けてきました。シマロンにいる間も、あなたをあんな形で苦しめていたあの瞬間も、俺はあなたに焦がれ続けてきました! あなたを誰よりも、何よりも、この世界よりも……」 愛しています。 ゆっくりと静かに、コンラッドがその言葉を告げる。 おれもコンラッドも、お互いから目を逸らさず、しっかりとその視線を合わせてそれぞれの瞳の奥を覗いていた。 コンラッドの目におれが映っている。きっとおれの目にはコンラッドの顔が映っているんだろう。 愛している、と言ってくれたコンラッドの言葉が、その音のまま、瞳から魂に溶け込んでいくような気がする。 「……うん。おれも。愛してるよ、コンラッド」 おれの思いも、コンラッドの魂にちゃんと受け止めてもらえるだろうか。 コンラッドがかすかに微笑んで、すっと顔を近づけてきた。 目を閉じたおれの唇を、コンラッドの唇が押し包み、そして離れていく。 「……でも、コンラッド。その……そういうことって、いけないことなのか?」 コンラッドの笑みがまた苦笑に変わる。困ったなあって瞳が言ってる。その顔を見てると、何だかおれがものすごくちっちゃい子供になってしまったみたいだ。 「身体を投げ出すとか言ってたけど。でもそれ変じゃないか? おれは自分の身体を粗末に扱おうとしてるんじゃないぞ? 好きな人と、本気で好きになった人と、つまり、そのー……そういうことをして、愛情をだな、えーと、つまり、確かめ合いたいって思うのは……軽々しい考えなのか? それ、違ってないか?」 コンラッドから苦笑が消えて、戸惑うような、困惑してるような、とにかく本気で困った顔になってしまった。眉間にグウェンみたいな皺が寄る。 「ユーリ、それは……」 「それとも……コンラッドは、おれがコンラッドを好きって気持ち、本気にしてないんじゃない?」 コンラッドが驚いた様子で目を瞠いた。 「何も分ってない子供が、恋に恋してっていうか、好きって気持をうっかり錯覚して、自分が恋してると思い込んでるだけだろうとか……そんな風に思ってるんじゃない? だから……」 「待って下さい、ユーリ」 「…………」 おれを見下ろすコンラッドには、もう苦笑も戸惑ったような表情もなかった。これまでで一番真面目な顔で、真剣な目つきでおれを見つめている。 「それが勘違いした子供の言葉なら、おれはどんなにあなたに恋い焦がれていようとも惑わされたりしません。あなたの言葉を軽くいなして、自分のこの思いをあなたに告げるような真似は絶対にしませんでした。俺は、大切なあなたを恋愛ごっこに引き込んで楽しむようなことは決してしません!」 「……コンラッド……」 嬉しい。 コンラッドの思いが、心から嬉しい。……だったら。 「だったら……どうして……? 明日……コンラッドはおれの側から離れてしまう。いつ帰って来れるか分からない……だろう? だから……確かめたい。おれとコンラッドの気持ち、身体に、その……刻み、つけたい……!」 「……ユーリ……」 コンラッド。呼び掛けて、瞳を見つめる。その奥の魂に届いて欲しいと願いを込めて。 「昨日今日、考えついたんじゃないんだ。ずっと……考えてきたんだ。本当に、本気で本当に好きだから、結ばれたいって思う気持ち……軽々しくなんて言わないで……お願いだから」 「ユーリ……」 コンラッドが食い入るようにおれを見つめて、それから深く息を吐き出した。 ……また困ったーって顔をしてる。 「コンラッド?」 「…………あなたが」 コンラッドがちょっと情けなさそうな、弱々しい笑みを浮かべて言った。 「あなたが大切なんです。護りたいんです。今のままのあなたを……。何であろうとあなたを傷つけるものは許せない。それが……俺であっても。いえ、俺ならばなおさら……」 「傷つけるって…? どうして? どうして傷つけるなんてことになるんだ? それ、おかしいよ、コンラッド。それに………」 ギーゼラも大丈夫だって言ったし。 その瞬間、コンラッドの身体がぴきーんと固まった。 「………ギーゼラ……? ど、どうして、ギーゼラの名前がここで……」 「えっと……おれ、身体が、その……だろ? だからさ、ちゃんとできるものなのかなー? って思って、一度ちゃんと聞いておこうと……。ギーゼラも何でも聞いてくれって言ってたし……。あ、でも、コンラッドとそうしたいからなんて言わなかったぞ! ちゃんとその辺は気をつけたんだから!」 ギーゼラの癒し顔が目に浮かぶ。 『……えっとー、あのね、ギーゼラ。これって別に深い意味なんか全然ない、ごくごく一般的な質問なんだけどー。あの……ホントに深い意味は全っ然ないんだけど……』 『大丈夫です、陛下。どうぞどのようなことでも質問してみて下さい。それに私には守秘義務があります。陛下のお心の内にあるものを他へ洩らすようなことは致しません。どうぞご安心下さい』 『う、うん。ありがと。えっと……あ、あのね、おれ、みたいな身体の人がー、そのー、好きな人とー、あー、そのー……つまりー……したい……時って………』 『したい時? ……好きな人と、と仰いますと、それはもしかすると……いわゆるせいこ……いえ、えーと、愛を確かめあう行為、についてでしょうか?』 愛を確かめ合う、の一言に、顔がぼんっと爆発するみたいに熱く火照った。 『…や、あ。う……その……そうなんですけどー……。えーと、その……できるものなの……?』 『もちろんですわ、陛下。陛下には男性と女性の両方の生殖機能が備わっております。その行為もちゃんとできます』 じゃあやっぱり内臓だけの問題じゃなかったのかな? 『その……その時がきたら、おれはー……どうすれば……』 『何も』 『何も?』 『はい』 『おれ、何もしなくていいの? だってそれじゃ、その……できないんじゃ……?』 『大丈夫です、陛下。……そうですね、ちょっと早過ぎる気もしないではありませんが……。しかし陛下を取り巻く状況を考えれば、早くきちんとした方がいいのかもしれません』 『……あの、ギーゼラ……?』 『大丈夫です、陛下!』 ギーゼラがおれの肩に優しく両手を乗せて、力付けるように笑みを浮かべ頷いた。 『安心して、全てコンラートに任せるのです。絶対に大丈夫ですよ』 天使のような微笑みだった。 「…………あれ……?」 そこまでコンラッドに話て、ふと妙なことに気づいた。 「ギーゼラ、コンラートに任せろって言って、た、よな……? 興奮してて、うっかり聞き流しちゃったけど。……気のせいかな? だってギーゼラがおれ達のことを知ってるはずないし。なあ…」 コンラッド? 不思議な思いで見上げれば、コンラッドは全身の力が抜けたみたいにがくーっと肩と頭を落としていた。 「…………コンラッド」 気を取り直すように深呼吸を一つして、コンラッドに呼び掛ける。けどコンラッドは顔を上げない。何だか悩んでるみたいだ。 「コンラッド。もしかして……おれみたいな身体じゃ、そんな気持ちになれない?」 コンラッドががばっと顔を上げる。目が大きく瞠かれている。 「女の人みたいに……胸もないし、ウエストはくびれてないし……」 「ユーリ! そんなこと……!」 「……あのさ。俺のさ……、俺の……身体、本当に気持ち悪いって思わない!?」 コンラッドが無言のまま、焦った様に首を激しく左右に振る。 「こんなっ、男だか女だか、全然分かんない身体、見てもヤじゃない? みっともないとか思わない? こんな身体してても……それでも………」 恋人だって、本当に思ってくれる……? その言葉が終わらない内に、おれはコンラッドにぎゅっと抱き締められていた。 「あなたは……この地上の誰よりも、何よりも、綺麗です……! 俺はそう思っています。…ユーリ、身体の形がどうかなんて、何の関係もないんです。言ったでしょう? 俺は……俺は誰よりもあなたを……!」 「…だったらっ!」 だったらコンラッド! おれは背中に回した腕に力を込めて、コンラッドを抱き締めた。 「おれは傷つけられたりしない! 大好きな人と、愛してる人と愛しあって! それで傷なんかついたりしないっ! おれはコンラッドが好き! 愛してる! 明日、離れてしまうから、だから今夜、おれにしっかり残していって! コンラッドの気持ち。おれを誰より何より愛してくれてるって気持ち。おれの心と身体に刻みつけていって欲しい!!」 「ユーリ!」 今までないくらい、コンラッドがおれをぎゅっとぎゅっと抱き締めてくれた。 →NEXT プラウザよりお戻り下さい
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