宴の前の嵐・9ー1 |
ユーリ達三人を乗せた荷馬車は、一気に丘を駆け下り、村へと近づいて行った。 やがて村の入り口にもう間近、という所で、村から唐突に鐘の音が響いて来た。 「…あれは、村の集会所の鐘です。我々に気づいて、村の者を集めているのでしょう」 うん、と素直に頷いたユーリだったが、その顔にはどこか不安が漂っている。 魔族を忌み嫌い続けてきたベイルオルドーンの民。その村の人々が、いくら領主であるウォルワースから話を聞いているからといって、本当に快くユーリを、魔王を受け入れてくれるものなのだろうか? ユーリの脳裏に、初めてこの世界に流されて来た時の、人間達の反応が思い出された。 ………眞魔国の国境地帯で、魔族はよく知ってる人達でさえ、あれほど拒絶反応が強かった……。 不安に暗くなりそうな自分に気づいて、ユーリはペチペチと頬を叩いた。 ………がんばれ、おれ。真心だ。誠意と真心でぶつかっていくんだ! とことん話し合えば、どんな人だってきっと分かってくれる……かもしれないしっ。最初から諦めてちゃダメだろ、おれ! コンラッドが助けに来るまで、ここでがんばるんだ! 「…陛下? 如何なされましたか?」 「う、ううんっ。何でもないよ、カスミさん!」 ぶんぶんと頭を振って笑顔を浮かべる。 「………村人達が出てまいりましたな」 ウォルワースの言葉にハッと顔をあげる。 前方、村の入り口に、いつの間にか多くの人々が集まって来ていた。 「お帰りなされませ、ローガン様。……お待ち申して…おりました……」 どこか緊迫した雰囲気の中、顔を青く強ばらせた男性が前に進み出て来てユーリ達を出迎えた。 「ライナス、済まんな、面倒を掛ける」 いいえ、とライナスと呼ばれた男が首を振った。おそらくこの男が、ウォルワースの信頼する村長なのだろうと、ユーリは思った。 小柄だががっちりと鍛えた体つき。年の頃は、40歳から50歳、位だろうか。顔の下半分を髭が覆っているので、良く分からない。髪も髭も、ごわごわした赤土のような色だ。 「それで、ライナス……」 「その前に、ローガン様! ……申し上げたい事がございます!」 口を開きかけたウォルワースを遮って、ライナスが断固とした声を上げた。 その決意に満ちた表情に、やはり、とユーリは唇を噛んだ。次に出てくる言葉が、もう耳に聞こえるような気がする。彼らは……ユーリを拒もうとしているに違いない。 「どうした、ライナス?」 「………ローガン様からお話を受けて以来、皆とずっと話し合いを続けてまいりました。その……ローガン様が仰せになった…お方を……この村にお迎えする件につきまして……」 魔王、とはあまりに恐ろしくてとても言葉にはできない。そう言いたげに、ライナスは何度も落ち着かなく唇を嘗めて言った。 「ライナス! それはもう……分かってくれていたのではないのか!?」 ウォルワースの声が、焦ったように揺れる。 「お許し下さい、ローガン様。皆……やはり、一度では納得できんのです……。それで……とにかく、とにかく結果から申し上げます。………我々チェスカ村の一同は、その、お方を……」 ライナス村長はごくりと唾を飲み込み、意を決したようにまっすぐウォルワースを見上げた。 「……心より…歓迎致します」 「…………………」 望んでいた言葉。 しかしそれは、強ばった村長、そして彼の後方に顔を並べる村人達の表情とあまりにもかけ離れている。 「………ライナス……」 「…ローガン様には、旱魃で村が危機に陥りました時も、疫病が流行りました時も、御尽力賜り、皆を助けて頂きました……」 「領民を護るのは、領主として当然の事だろう! ライナス、私は恩を盾にとって無理を通そうなどと考えているのではないのだ。……先だっての話、分かってくれたのではなかったのか!?」 ウォルワースの声は、怒りと哀しみと焦りと、複雑な思いが混ぜ合わさり、酷く悲痛なものにユーリの耳に響いた。 無理もない、と思う。何百年、いいや、もしかすると千の単位がつくかも知れない年月、この国の人達は魔族を怖れ、厭ってきたのだから。 ウォルワースがどれだけの時間を説得に使ったかは分からないが、それは決して先祖代々培ってきた恐怖を、軽々と覆すものではないだろう。 「お許し下さいませ、ローガン様! 私らは学もなければ、鍬や犂を奮う以外、生きる技を持たない臆病な百姓に過ぎんのです……。ですから皆……恐ろしさを、想像するだけで歯の根も合わなくなるような恐怖を……今も捨てる事が出来ずにおるのです。ですが……いいえ、ですからこそ! 私らは最後にはローガン様を信じる事に致しました。私ら村の者が敬愛して止まないローガン様が、その、方を、信じると仰せになるなら……私らも信じようと……! どうかそれで、お許しを………!」 『魔王』への恐怖を消しさる事などできない。ウォルワースの言葉を鵜呑みにする事もできない。ただ、それでも、ウォルワースその人を信じる事はできる。だからこそ、全ての恐怖を押し殺して魔王を受け入れる。 村人達が、おそらくは議論に議論を重ねて出した、それが最後の決断であり、覚悟だった。 彼らは、魔物を村に入れる恐怖よりも、ウォルワースを信じる方を選んだのだ。 「……ライナス……皆も……」 ウォルワースは深々と息をつき、村長を、そして後方に並ぶ村人達に目を向けた。 村人達が頭を下げる。 「……ウォルワース……」 ユーリは、そっとウォルワースの袖に触れた。振り向くウォルワースに、小さく頷きかける。ウォルワースも頷き返し、ユーリを紹介するため前に招いた。と。 「そっ、それで、ローガン様!」 ライナスが咳き込むように言葉を続けてきた。 「…………ライナス?」 「その」ライナスの顔色が悪い。「その……それで、その、私ら、村の皆で話し合いまして……。その、私らは…気のきかん田舎者でございますので、その、お方にご不快な思いをさせてはいかんのではないかと思いまして……」 「……? 何の事だ……?」 「その…お方の、もしお怒りでもかうような真似をしてはと……考えるだけで恐ろしく……その……」 ライナスの声はどんどん小さくなり、ほとんど呼吸困難のような喘ぎが漏れてくる。その時。 「おとっつぁま!」 ライナスの後ろから、ずい、と現れた人影があった。 「……おお、マルゴではないか」 村長の娘です。ユーリの耳元で、カスミが囁く。頷くユーリは。 うわー。完璧なアスリート体形! 思わず感嘆の息を洩らしていた。 現れたのは、ユーリが見上げる程に背の高い、だが、ひょろりとしていなければ太ってもいない、実に均整の取れた見事なプロポーションの女性だった。出るべきところはドンと出て、引っ込む所はきゅっと(それなりに)細い。膨らんだ半袖から伸びる、二の腕から手首にかけてを、農作業で鍛えた賜物なのか、バランスのいい筋肉が覆っているのをユーリははっきり見て取った。 バレーボールとかバスケの選手にしたら、ものすごいポイントゲッターになりそうな迫力だ。 それに、父親と違う波打つ金髪と青い瞳の彼女は、きりっとした気の強そうな中々の美人でもある。 ユーリがもうちょっと年上で、コンラッドくらいの身長があって、恋人がいなかったら。でもって、もう少し小心者でなかったら、きっと「お嬢さん、一緒にロードワークに出かけませんか?」なんて、ナンパ(?)をしていたことだろう。 などとつらつら考えていたものだから、その女性とウォルワースの会話の発端を聞きそびれてしまった。 「…マルゴ! お前、お前達は何を……!」 「皆で決めた事です、ローガン様! その方、いいえ、魔王は」はっきりとその名称を口にする。「汚れのない乙女を求めると聞いております! もしその求めを拒めば、魔王の怒りは国をも滅ぼすと……。村の皆を犠牲にはできません! おとっつぁまの、村長の娘として、私が、このマルゴが……」 女性、マルゴが決意と覚悟を漲らせた瞳を見開き、ウォルワースを見た。 「魔王にこの身を捧げる、生贄となります!!」 「………………………ほえ……?」 今何だか変な言葉を聞いたような。ユーリはくん、と首を傾げた。 いけにえ……って、なんだっけ? なまにえの聞き間違いとか? ………魔王の生煮え……!? 釜茹でされてる自分の姿を想像したユーリが、慌てて顔を上げて見ると、マルゴと村長、そして集まった村人達は、悲愴な決意と覚悟に、顔を蒼白にしてウォルワースを見つめていた。対するウォルワースとカスミは………どこかぐったりと脱力している。 「………あのな、マルゴ……」 「覚悟は出来ております、ローガン様!」ウォルワースの言葉など聞いてない。「たとえこの身を辱められ、果てに八つ裂きにされようとも! 私は決してローガン様を恨んだりは致しません!」 「…いや、あの、だから……」 「それでローガン様!」さらに迫力が増す。「魔王はいつ、どうやってこの村にやってくるのですかっ!?」 ずいずいと迫りながら問いつめるマルゴに、ウォルワースも思わず後退る。 「私は非力でかよわい女に過ぎませんが、純潔も命も、捨てる覚悟はすでにできております! ローガン様! 私を魔王に引き合わせて下さいませ!」 呆気にとられるユーリの目の前で、マルゴがウォルワースの襟首を引っ付かんばかりに詰め寄った。 「……マ、マルゴ……」 「はい!」 「魔王陛下は……」 「はっ、はい!」 「………もうここにお出でになっておられる」 ハッと、マルゴが身を引いた。ライナス始め、村人達の緊張も一気に高まる。 「……ど、どこに……」 マルゴの視線が左右に振られた。ちなみにその視線は、軽くユーリの頭の上を越えていた。 ……おれ、もしかして、視界に入って、ない……? 何だかすごく情けない。しかし、ユーリを本当の衝撃が襲うのはこの後だった。 「……マルゴ。その……魔王陛下は……お前の目の前にお出でになるその方……」 「目の前?」 ユーリの頭の上を、マルゴの視線が行き来する。そして、さらに前方を探そうと一歩踏み込んだところで、ようやくマルゴがユーリの存在に気づいた。だが。 「……ごめんよ、お嬢ちゃん」 ちょっと邪魔。そう言いたげに軽く眉を顰めると、マルゴは手を伸ばし。 ユーリの脇の下に手を差し入れると、ひょいとその身体を持ち上げた。 ………がーん! 余りの事に、硬直するユーリ。 女の人に。 20歳そこそこの女の人に。 平均的(を少々下回る)体形の男子高校生が。長年の野球経験でそれなりに鍛えてきた男が。 ちょっと男と言い切るには問題があるにしても。 まるで幼稚園児か小学生のように。 ひょいと持ち上げられてしまった。 ひょいとぉ……っ!! 全く重さを感じないように、マルゴはユーリを持ち上げたまま、きょろきょろと周囲を見回している。マルゴが身体を動かす度に、ユーリの身体もまた左右に揺れた。 マルゴにぶら下げられ、ショックで人形のようにされるがままになっているユーリを見つめるウォルワースとカスミの表情は、何だかどっと疲れている。 「……さすが魔王ですね、ローガン様! 影も形も見えません! 空気に溶けているのでしょうか? それとも黒い風に乗って現れるとか。ああ、土の中に隠れているのかも!」 「………マルゴ」 「はいっ!」 「……そろそろ魔王陛下を下ろして差し上げてくれんか…? そんなに振り回しては、いくら何でもお可哀想だ……」 「…………え?」 「…………………」 「…………………」 「…………………」 村の広場を沈黙が覆った。 「………ローガンさま……?」 おずおずとライナスが進み出る。 「あの、今……何と……?」 だから。 ウォルワースが、はあっと大きく息を吐き出した。 「……マルゴが、今ぶら下げ……いや、抱き上げているお方こそ………魔王陛下、だ」 村人達の視線が、マルゴに持ち上げられているお下げ髪の少女に集中する。 再び、なんとも言えない沈黙が、村人達を支配した。 下ろすどころか、マルゴは更にユーリを高く、自分の目の高さまで持ち上がると、まじまじとその顔を見つめた。 「………ひょえ……」 ユーリの口から意味不明の声が漏れる。きつめ系美女のきっつい眼差しと形相は、今にもユーリの頭を敵方コートに向けてアタックしそうな強烈な迫力に満ちている。一瞬襲ってきた恐怖に、ユーリはとっさに頭を抱えた。しかしそのおかげで、逃避していた意識が戻ってきた。 「……あ」 目の前、20センチ先に、アタックNo1な美女。視線を転じれば、周囲にぎっしりと詰め掛ける観客、もとい、目も口も真ん丸に開けて自分を凝視する村の人達。 …………………ごあいさつせねば……! ユーリの脳裏に、とっさに浮かんだ言葉がそれだった。 何事もマズは礼儀正しく! そして、誠意と真心と、それから、えーと、気合いと根性と……っ。 今の状況はとにかく置いて! がんばれ、おれ! 「………どどどど、どぉーもー……。まま、ま、まおう、でぇす。……えと、……こんにちはー……」 どうぞよろしくー……。 気合いと根性はなし崩しに消滅したらしく、声はどんどん小さく、頼り無くなっていく。 ひゅるるるる、と、乾いた風が沈黙の広場を渦を巻きながら過ぎていった……。 その頃。 ウォルワースの領地の中心部にある教会では、ある一団が額を突き合わせ、真剣に議論を交わしていた。 「………でっ、では、ウォルワース様は本当に、その、魔王、を……?」 「神官方や大宰相に逆らって、チェスカ村で匿うと……」 ごくり、と、集まった者達の喉が鳴る。 「魔王……を……」 「……あ、あの、魔王というのは、小山よりも巨大で、黒い炎と邪悪な蛇で身を覆っていると聞きました。そんなに大きくて、村に入れるんですか……?」 「…そういう誰も分からん事を聞くな!」 「それで、チェスカの衆は……?」 「ウォルワース様を信じて従うと決したそうだ」 「……………何ということ……」 「アレク……アレクディール……、それだけじゃないんだ」 「どうした?」 「……村長の娘の、マルゴが………魔王の慰みものとして、生贄となる事になった……!」 「なっ、何だと!?」 ガタンッと音を立てて、僧衣を纏った青年が立ち上がる。 「マルゴが……っ!?」 唸るように言うと、青年が席を蹴って場を飛び出した。 「アレク! どうするつもり!?」 叫んだのは、騎士の出で立ちに身を包んだ女性だ。 「この目で確かめてみなければ、埒が明かん! ウォルワース様が魔物に取り込まれてしまったのか、それとも……! とにかく! 俺は行く! マルゴが……っ、マルゴを………!」 僧衣と、項で一つに括った薄茶色の巻き毛を翻し、アレクと呼ばれた青年が教会を飛び出していく。 「俺達も行くぞ!」 おう! その場にいた全員が、一斉に駆け出していった。 「もう間もなくチェスカだ!」 全力で馬を駈る一団の中で、誰かが叫んだ。 「大気に異常はないか? アレク、瘴気は?」 「いや、何もない! 瘴気も毒気も感じない。魔力が振るわれた気配もない…!」 「アレク、あなたの法力を信じていいわね?」 女性騎士の問いに、青年が頷いた。 「間違いない。チェスカはまだ無事だ。とにかく急ごう!」 アレクディールは司祭補だ。ウォルワース家が治める村の一つで、領主に仕える郷士(下級騎士)の家の次男坊として生まれた。 幼い頃から法力の能を認められ、家の跡継ぎでないこともあって、やがて神殿で修行する事となった。 法術師として、抜きん出た力を大神官からも認められ、神殿でさらに神官として修行する事を勧められたが、結局生れ故郷の村に帰った。 神殿で出世する事に興味がなかったとは言わない。しかし、何より故郷の村が好きだった。 ウォルワースに治められた3つの村は、どれも規模は小さいが気候も良く、人柄ものどかだし、幼馴染みも大挙している。中でも、年下の癖に小さい頃から姉さん気取りで、いつもケンカばかりして育ってきたチェスカ村のマルゴは特別だった。 妻帯できない神官でもなく、神殿の命で各地を回る法術師でもなく、村の司祭補というどこか中途半端な立場にいる理由の一つに、マルゴの存在がないと言えば嘘になる。 今、アレクディールの腰には、司祭に似つかわしくない剣が下げられている。 騎士の息子として、それなりに剣の修行もしてきた。法術は、さらに自信がある。 もちろん、そのどれもが魔王に通用すると自惚れる程愚かではないつもりだ。だが、いざとなれば、持てる武器は全て使うつもりでいる。 ………マルゴ! 俺が必ず、魔王の毒牙からお前を護ってみせる……!! 司祭補と、その幼馴染みの若き騎士達は、愛する村と村人達を救うべく、懸命に手綱を振るい続けた。 ようやく辿り着いたチェスカ村。 もしかすると、最悪、魔物の邪悪な力で全滅しているのではないかとさえ、口には出せないものの密かに予想していた若者達だったのだが。 「…………元気そうだな……」 1人が呟いた。 村の中心、広場に、多くの村人達が集まっていた。なぜかえらく興奮して、わいわい騒いでいるようだが、恐怖におののいているようには全く見えない。だが何故か……女達、特に若い女の姿があまり見当たらない。 「……やはり、魔王を怖れて隠れているんじゃないのか?」 アレクの問いに幼馴染みの1人がそう答えたが、それにしては村人達の様子が妙だ。 「……ウォルワース様は、まだ到着されていないのかな…? とにかく、村長の家に向かおう」 彼らの存在に気づき、声を掛けてこようとする村人達をかき分けるように、彼らは一段となって村長ライナスの家に急いだ。 そして何故か更に人だかりの増した、村で最も大きな村長の家の前に彼らが到着した時。 「……うっぎゃあ〜っ!」 腰が砕けるような叫び声がしたかと思うと、村長の家のドアが勢い良く開かれ、中から子供が1人、駆け出してきた。 着替えでもしていたのか、胸元がはだけたシャツにズボン、そしてサンダルをつっかけただけの姿で、何故か頭にタオルを被っている。 子供─少年は勢い良く飛び出してくると、真正面にいた若者達の集団の中に紛れ込み、アレクの後ろに隠れるように回り込んだ。呆気に取られて振り返り、見下ろすアレクにくっついて、子供の手が僧衣の袖をぎゅっと握りしめる。 「……ごっ、ごめんなさい! あの……っ」 「あーら、アレクディールじゃないの?」 その声に思わず正面を向く、アレク達一同。 「…マ、マルゴ……? と…お前達……」 村長の家の中から、マルゴとうら若き村の娘達がぞろぞろと出てきていた。 「アレク、そこどいてちょうだい。邪魔よ!」 どこか凄みのある声でそう言うと、マルゴはすたすたとアレクの前に立ち、そしてにっこりと笑みを浮かべながら、その背後を覗き込んだ。 「…どうしてそんな所へお隠れになるんですか〜? さ、お風呂に入りましょう? このマルゴがお世話いたしますわ、魔王様っ!」 「ま、まお……っ」 「あっ、あのっ!」 アレクと少年の声が重なる。 その瞬間、勢い良く顔を上げた少年の頭から、タオルがふわりと地面に落ちた。 →NEXT プラウザよりお戻り下さい。
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