ほら吹きオーギュの息子・13



「………あの花を……もう一度見ておきたくて………。すぐに手の届かないところに行ってしまうから……」

 さっきまで僕が座っていた椅子に腰を下ろし、お茶のカップを両の掌で包み込んだまま飲もうともせずにクリスが言った。

「花って……あの魔石の花のこと?」
 ミツエモンの言わずもがなの問いかけに、クリスがこくんと頷く。
「あの花……前から知ってたの?」
 続けての質問には何も答えず、クリスはただ湯気が頬を撫でるに任せて半ば目を閉じている。
 そうしてしばらく沈黙が続き、どうなるのかと思っていたその時、ふいにクリスがカップを机の上に置き、すっと立ち上がった。
「クリリン…? どうし………あたっ!」
 ………あー……右手の拳が勝手にー……。
 ミツエモンが頭を押さえ、恨みがましい目で見上げてくる。その向こうでカクノシンさんとスケサブロウさんの、ちょっと引きつった顔。……お2人には申し訳ないけど。
「何だよー、マー君。いきなりー」
「いきなりー、じゃねーの! 相手が喜んでもいない呼び名を勝手につけて、勝手に呼ぶな! そういうのは失礼だぞ。相手が嫌がってるのに無理矢理押し付けたら、理解しあう前に喧嘩になるだろ!」
 愛称で呼んでもいいか確認してからにしろ! そう言ったら、ミツエモンは両手で頭を押さえたまま、ちょっとだけしょぼっとした顔で、「……わかった。マー君の言う通りだと思う。クリリンには後で聞いてみる」と答えた。
 ……まあ何というか……素直なのは間違いないし、これは確かにこいつの良いトコロだよな。うん。

「マチアス、何やってる! あいつが……!」

 エドアルドの声にハッと顔を向けると、クリスが真っ直ぐ石の花に向かっているところだった。
「しっ、しまった……っ」
 慌てて後を追う。
 万一。
 万一クリスの手で、あの花をどうにかされてしまったら……!
 1歩1歩ゆっくり進むクリスを早足で追い越し、僕とセリムとホルバートとマルクス─今この時間、花を護るべき任務を負う僕達─の4人でクリスの前に立ちはだかる。
「……これ以上、あの花に近づくな」
 殊更声を低めてそう告げれば、クリスは真っ直ぐ僕の目を見返してくる。
 そしてクリスのその目が、僕達4人と、それから自分の周りを囲む同期生達をぐるっと見回した。
 その顔は、ついさっきまで見せていたあの怯えた様子が演技だったのかと疑いたくなるほど静かで、いや、無感動でそして…無表情だった。

「クリスティアン」
 アーウィンが一歩前に踏み出す。呼びかけられたクリスが、その声の主に向かって振り返る。
「もう一度聞く。タウシュミットに何をしろと命じられてきた? それも……」
 お前一人で。
 クリスが、何の感情も浮かんでいない目をアーウィンに向ける。
 その唇が、今にも音を発しそうにかすかに震え、でも、すぐに何かを諦めたかの様に閉ざされた。
 目を逸らすように身体の向きを変え、クリスは再び、僕達の肩越し、あの魔石の花に視線を向けた。
「…………あの花を……近くで見ていたい……。せめて…朝まで。………それだけでいい、から……」
 そう言いながら足を踏み出すクリスの前に、セリムが立ちはだかった。
「断る」
 セリム─4人の中では一番頭が良くて、一番小柄で、浅黒い肌に愛嬌のある笑顔が持ち味のこいつが、非情なまでの冷たい声音できっぱりと言った。
「同期生に対してこういう言い方はしたくないが……君を信用するわけにはいかない。……僕達は今、恐れ多くも魔王陛下に捧げられる宝物に対して重大な責務を負っている。あの花を護るために命を懸けていると言っても良い。君が今この時、何のためにここにやってきたのかをはっきり教えてくれない限り、君をあの花に近づけるわけにはいかない。……悪いが、この部屋から出て行ってくれないか? それが一番良いと思う。僕達にとっても、そして君にとっても。もし万一、君の手であの花が傷つけられたり、最悪破壊された場合には……」

「そんなことっ! するもんかっ!!」

 クリスの叫びが、セリムの言葉を断ち切る。  一瞬で静寂─驚きと緊張に満ちた─が部屋を覆った。

 魂切る叫び。そんな言葉がふと浮かぶ。

 ただ一声叫んだだけで、クリスは肩を荒々しく上下させていた。
 もう無表情でもなければ、怯えもない。
 その全身に溢れているのは。
 怒り、だった。

 淡い金髪。緑の瞳。その顔立ちは確かに整ってはいるけれど、どこか自己主張が乏しく、ほっそりとしたその体つきと相まって、人の陰でひっそりと目を伏せているような雰囲気を常に纏っている。そのクリスが。

 大きく瞠いた瞳に、上下する肩に、握った拳に、噛み締めて震える唇に。怒りを漲らせている。

 もしかしたら。
 あの最初に見せた怯えた表情。そしてあの無表情。そのどちらもの奥では、ずっとこの怒りが燃え立っていたのかもしれない。そう、感じてしまった。
 その怒りが、あまりにも深くて、そして激しかったから。

「…………する、もんか……。傷つけるなど………壊す、など……っ!」

 噛み締めた唇から、軋るような声、いや、音が、言葉を紡ぐ。

「……クリスティアン……」
 アーウィンだろう声が、探るように発せられる。その瞬間。
 クリスがキッと顔を上げた。
 誰に向けてでもなく、あの魔石の花に向かって。

「あれは…あの花は……」

 タウシュミット家のものじゃない…!

 その言葉に、ハッと皆の表情が変わる。

「あれは……!」
 クリスが顔をくしゃりと歪め、それから決然と叫んだ。

「あの花は、僕の、僕の姉さんのものだ! ディオン兄さんが姉さんに捧げた、姉さんの花だ……!!」


 テーブルについたクリスの前に、湯気の立つカップが静かに置かれた。
「甘いカチュネだ。飲みな。落ち着くぜ」
 スケサブロウさんが言う。
 クリスはそれに答えず、ただ呆然としたような様子でただぐったりと座り込んでいる。

 叫んだきり、後は唇をぴたりと閉ざしたまま、全身を震わせているクリスを落ち着かせたのはカクノシンさんだった。

 わなわなと、熱病を病んだかのように身体を震わせるクリスの前に立つと、カクノシンさんはその薄い両肩にそっと手を置いた。そしてびくりと顔を上げるクリスに、「ゆっくりでいい、話を聞かせてくれないか?」と話しかけ、それはもう優しく微笑みかけた。
 カクノシンさんの穏やかで包み込むような笑顔を見上げたクリスは、しばらく唇を戦慄かせていたけれど、やがてぽろぽろと涙を流し始めた。大粒の涙がころころと頬を転がって胸を伝い、床に落ちていく。そんなクリスの肩を抱き寄せるようにして、カクノシンさんはクリスをテーブルに誘ったんだ。

 椅子にクリスを座らせて、その向かいの、さっきミツエモンが座っていた席にカクノシンさんが座る。
 あいつに任せときゃ大丈夫だから、とスケサブロウさんに言われて、僕達は2人を遠巻きに、でも話がちゃんと聞こえるくらいの距離をとって、見守ることにした。
 まあ…確かに僕達が問いただすより、カクノシンさんが話を聞いてやるほうがクリスだって話しやすいと思うけど。でも何というか……ムカつく気がするのは何でだろう。
 それでもとにかく見守ろう、と思ったら。
 ずりずりと、部屋の隅に片付けてあった大きくて頑丈な椅子を引きずって、ミツエモンがテーブルに近づいて行くのに気付いた。坊ちゃん坊ちゃん、とスケサブロウさんが慌てて手を出そうとしてるけど、なぜか無視してる。見れば…ミツエモンの顔もどこかムッとしているような……。
 ミツエモンはカクノシンさんのすぐ隣に椅子をドンと据えると、ドカッと音を立てて座り込んだ。
 その様子は何というかー……一緒に話を聞きたいというよりは、カクノシンさんとクリスの2人だけで話をさせるのがイヤだと言ってるような……。あ、いや、そう感じただけだけど……。
「……あいつ、何か怒ってるみたいな気がしないか?」
 左隣に立っていたホルバートがそっと囁いてきた。

 ぴったりくっ付くように座り、まっすぐクリスを見据えるミツエモンに、カクノシンさんは何だか場違いなくらい楽しそうに笑うと、ミツエモンの頭を軽く撫でた。ミツエモンがハッと顔を上げ、二人が目を合わせる。
 ………そこにだけ、別の時間が流れているような気がして、思わず目を瞠った。
 ほんの一瞬のことだけど。

 すっとカクノシンさんがクリスに顔を向ける。
「落ち着いたかな?」
 クリスが伏せていた顔を上げ、それから恥ずかしそうに小さく頷いた。
「先ほど」カクノシンさんがあくまで穏やかに言葉を繋いでいく。「ディオン兄さんと言っていたね。あれはスーリン・ディオンのことだね? あの花を作った彫刻家の」
「………はい」」
 クリスが消え入りそうな声で答える。
「親しかったんだね。兄さんと呼ぶほど。家族ぐるみで付き合っていたのかい?」
「僕が小さな頃からずっと……。兄さんがタウシュミットの庇護を受けるようになったのも、僕の父が世話をしたからで……。僕の家の離れに兄さんの工房があって、だから家族同様に暮らしてました」
 クリスの顔が懐かしそうに緩む。遠い過去の幸せな記憶に向けられた瞳が、柔らかく瞬いた。

「カクノシン殿に任せて正解だったな。僕達ではとてもああはいかない」
 今度は右隣に立っていたエドアルドが囁いてきた。僕と左隣のホルバートが共に頷く。
 やっぱり出来た大人は違うなあ。って言っても、あの人はまだ100歳そこそこの若者だけど。持って生まれた人柄かなあ。

「お姉さんがいるんだね?」
 はい、とクリスが頷く。
「シホナといいます」

「シホナ!?」
 思わず声が出た。
 カクノシンさんやミツエモンも含めて、全員の視線が一斉に僕に集中する。
「あ……すみません!」
 そんなつもりはなかったけど、カクノシンさんの邪魔をしてしまった。
「あの、僕の姉も、あ、姉は2人いるんですけど、その、一人が同じ名前で……。すみません……」
 いいや、とカクノシンさんがにっこりと笑いかけてくれる。クリスも落ち着いたのか、それとも同じ名前の姉を持つもの同士の親しみを感じてくれたのか、小さく微笑みかけてきた。思わず僕も笑みを返してしまう。

「……それで?」
 話を戻したカクノシンさんに促され、はい、とクリスが頷く。
「姉と兄さんは、いわゆるその…恋人同士でした。あのままであれば、いずれ結婚していたと思います。兄さんは平民ですが、タウシュミット家はもちろん国中の人々に認められた芸術家ですし、僕の家は貴族とはいっても名ばかりで、タウシュミット家から頂いたわずかな荘園がある程度の下級貴族ですから……」
 荘園を持ってて下級はないだろ、と、すぐ近くに座り込んでいたルドルフのぼやく声が聞こえる。固まって座っていたミハエルとハインリヒが「全くだよ」「だったら僕達は何なんだ?」と、ちょっと聞こえよがしの声を上げた。
 まあ……気持ちは分かるけどな。

「でもあの戦争が起こってしまった。……スーリン・ディオンは戦死したのだったね」
 カクノシンさんが何も聞こえなかった顔で話を進めていく。
 クリスも傍から聞こえる声にちょっと戸惑った様だけれど、蘇る思い出の方が強かったのか、すぐに哀しそうな顔で頷いた。
「兄さんは戦うことなど出来る人ではありませんでした。だから……覚悟していたのかもしれません。出征する直前、あの花を姉に授けていったんです。おそらくは……形見のつもりで……」
 そうか、とカクノシンさんが小さく頷く。隣のミツエモンも、どこか切なそうに視線を伏せた。
「あの花は」
 ふいに語調を変えて、クリスが言った。目が台座の上の花に向けられている。
「実はまだ制作途中なのです」
 そうなのか? ミツエモンが声を上げた。クリスが頷く。
「もしも…戻ることができたら仕上げる。そう言い置いて行ったそうです。本当はもう1輪、花を咲かせるつもりだと……」
 でもできなかった。
 クリスの瞳が哀しげに揺れる。
「姉は……このままで良いと言っていました。まるで崖に1輪だけ、懸命に咲いている様な姿が健気で綺麗だと……。姉はこの年月、兄さんの唯一の形見であるあの花を、ずっと大切にしてきました……」
 なるほど、とカクノシンさんが呟き、それから部屋の中がしんと静まった。
「……それを……タウシュミットに……?」
 ミツエモンが苦しげに問いかける。クリスの頬が自嘲に歪んだ。
「どうすることができますか? 天才スーリン・ディオンの作品を魔王陛下に献上するのだと言われて。タウシュミット家の跡取りの、将来が掛かっているのだと言われて……!」

 クリスが顔を手で覆った。
 肩が、震えている。

「………アーデルワイズ家でずっと…保管、していたものを、恐れ多くも魔王陛下に捧げることが許されたのだと……。お前達にとってもこの上ない名誉だろうと……言われ、ました……」
 ひくり、とクリスが1つしゃくり上げた。
「姉が……可哀想で……。何も言わず花を差し出して……涙も見せずにただじっと耐えていた姉が……可哀想、で……」
「……イヤだって断ることは……できなかったんだよね……」
 ミツエモンの声から最後は力が抜けた。
 できるわけがない。僕の隣でエドアルドが呟く。
「当然です。そんなこと、できるはずがないでしょう? ……僕の家は代々タウシュミット家に仕えてきました。タウシュミット家がなければ、僕達は生きていけないんです…! 姉も……他の誰でもない魔王陛下に献上されるのであれば、ディオンもきっと喜ぶから、と……本当は辛くて仕方がないはずなのに笑ってそう言って……懸命に耐えています。でも…僕は……!」
 クリスが溢れる涙を隠すように顔を伏せる。
 その向かい側で、カクノシンさんとミツエモンが顔を合わせた。その傍らに立っているスケサブロウさんも難しい顔で見下ろしている。
「……それで?」
 カクノシンさんが視線を戻して問いかけた。ふとクリスが顔を上げる。……涙でくしゃくしゃだ……。
「君はここに来た。花を見るだけだったら、この時間じゃなくてもいいはずだろう? どうして今ここに来たんだい?」

 教えてくれるね?

 穏やかな、だけど逆らいようのない声に促されて、クリスの肩からガクリと力が抜けた。

「………僕が……あの花を姉に返してやって欲しいと願っていることを…ルーディン様は気付かれたのだと、思います。あの……ルーディン様と、それからフォンギレンホール卿は、何とか、その、教官達と、ロードン君達平民出身の候補生達と、それからフォングランツ卿と、そして……あなた方、に……その罪にふさわしい罰を与えてやらなければならないと……」
 クリスがおずおずとカクノシンさん達に視線を向けた。
「俺達も? ……攻撃目標が多すぎるな。作戦立案に携わる士官としては、少々問題ありだね。理由は?」
 カクノシンさんが笑って言う。クリスがぎくしゃくと目を逸らした。
「……教官達はそもそも尊い身分の者を指導する資格がなく、平民出身の彼らは、卑しい身分で自分達の同期生を名乗るなどという無礼を働いている。フォングランツ卿は…一族のなした事を思えば、同じ十貴族とはいえ、自分達に対して多少なりと遠慮すべきところであるにも関らず、常に生意気な態度で終始し、それどころか卑しい身分の者達と平然と交わっている。これは……十貴族の誇りを泥足で踏み躙るようなものだ、と……」
 ふん、とエドアルドが鼻で笑った。
「それで? 俺達は?」
 カクノシンさんが続きを促す。
「あの……身分も弁えず、自分達に大恥を掻かせたと……」
 ぷっとスケサブロウさんが吹き出した。カクノシンさんも苦笑している。
「大恥って……、もしかして、あの剣術の!?」
 クリスに頷かれて、質問したミツエモンが「嘘だろぉ…」と呆れた様にため息をつき、背もたれにぐったりと背中を預けた。
「それが許されざる罪だと彼らは主張する訳だね。それで罰を与えなくてはならない、と?」
 はい、とクリスが頷く。
 カクノシンさんが「なるほど」と、続けた。
「それで、魔王陛下に献上するため運び込んだ花を利用することにした。父親の権威を利用し、教官達に圧力まで掛けて。彼らが任務に就いている間に何らかの事件を起こし、花を奪うなり傷つけるなりして、責任をなすりつけようとした訳だね。ついでに教官達の監督責任も追及すれば、敵とみなした相手を一気に片付けることができる。俺達を除いて、だが」
 はい、と再びクリスが頷いた。
「ですが、傷つけることは論外です。あれは魔王陛下に献上するものと決まっていますし、タウシュミットのご当主からもくれぐれも大事にと言い付かっておりました。ですからその……フォングランツ卿達が8人揃って警備につくことは僕の仲間が探り出していましたので、その4時間の間に花を奪おうと……」
「どうやって?」
 それは、とクリスが口ごもる。
「8人で護っている限り、花を奪うのは難しい。とすると、彼らを花の側から引き離さないとならない。だろう?」
「……はい」観念したようにクリスが答える。「なので、例えば、その……部屋の近くの廊下に……火を、つける、とか……」
 ざわっと部屋の中の全ての影が揺れた。
「放火……!?」
「こともあろうに士官学校にか!?」
「ここは血盟城の敷地の中だぞっ!」

「止めました!」

 悲鳴の様な声を上げてクリスが言った。

「僕達…っ、タウシュミットに仕える僕達も、それからギレンホール家の者も、皆で止めました! 万一事が露見すれば、その時は……!」
「その時は、タウシュミット、いや、フォンビーレフェルトとフォンギレンホールは謀叛を疑われることになるだろう。士官学校は血盟城の一部。魔王陛下のおわします血盟城に火を放ったとなれば、当然そうなる」
「仰る通りです……。ですからせめて、部屋の近くで大きな音を立てて注意を引いてはどうかという提案がされました。でも……それだと8人全員が花から離れてくれる確証がなく、下手をすると彼らと僕達の間で、互いに剣を抜くという事態になりかねません」
「なるだろうね」
「8人の中にはフォングランツ卿も、それからノイエ君もいます。簡単には……。顔を見られれば大変なことになりまから僕達はもちろん、家の郎党を使うのも憚られますし……」
「8人を殺してしまえとは…言われなかったのかい?」
 一瞬、意味が分からなくてぽかんとする僕の周囲で、「まさかそこまで……っ!?」と、驚きの声が一斉に湧き上った。
「いっ、言われませんっ、そんな事!」
 クリスが慌てて両手を振る。
「るっ、ルーディン様は……!」
 そう声を張り上げたと思ったら、ふいにクリスの身体から力が抜けた。
「ルーディン様は……あのように尊大を装っておられますが、実際はお気の弱い方なのです。ご身分の高さに押し潰されぬよう、懸命に虚勢を張っておられるだけ…なのです」
 教官達には結構強気で食って掛かってたけどなあ、と首を傾げていたら、
「自分より立場が弱いと見れば強く出られる、というアレだな」
 と、いつの間にか側に来ていたアーウィンが教えてくれた。
「その代わり、相手に強く出られると途端に萎んでしまう。つまり真の意味で誇りの何たるかを知らないし、そのために己を磨くという努力をしていないから自信も持てない。できるのは虚勢を張って威張り散らすだけ、ということになる。一言で言えば、愚か者だ」
 声を潜めもしないアーウィンの言葉に、僕も含め、仲間達から一斉にため息が漏れた。

「ルーディン様も、それからフォンギレンホール卿も、人の命を奪えと命令できるような方ではありません。そのような……」
「度胸はない?」
 カクノシンさんの容赦のない言葉に、クリスが視線を落とした。
「……ただ」
「ただ?」
「街で、ならず者を雇うことはできないかと仰いました。賊として侵入させ、その者達にフォングランツ卿達の相手をさせ、花を奪わせれば良いと……。そうすれば僕達は手を汚さずに済みますし。それで、その……後であなた方、ミツエモン殿一行を、宝物の事を探りに来た賊の仲間だと告発できれば、万事上手く行くのではないかと……」
 阿呆。言ってスケサブロウさんが天を仰ぎ、顔を大きな手で覆った。ミツエモンがふはーっと大きく息を吐き出して、またも脱力する。
 どうして。僕は思わず首を捻った。
 勉強は全然できないのに、どうしてこんな悪巧みはちゃんとできるんだろう? 不思議だ……。
 これで分かっただろう? マチアス、と隣からエドアルドがそっと声を掛けてきた。
「上流貴族というものは、これほど陰険で陰湿で最悪で最低なんだ!」
「マチアス」
 僕がエドアルドの言葉に答える前に、アーウィンが横から口を挟んできた。……あれ? こいつ今、僕のことを「マチアス」って名前で呼んだよな…?
「僕からも一言いっておくが、上流貴族の誰も彼もがあんな愚か者と同じではないぞ。誤解しないでくれ。……エドアルド、頼むから自分もその上流貴族の一人だという事を思い出してくれ」
 アーウィンの嗜める言葉に、エドアルドがふいっと横を向く。

「君はそんな企みが上手くいくと思うかい?」
 カクノシンさんに問い掛けられて、クリスがほんのわずか間を置いてから小さく首を左右に振った。
「ならず者を血盟城の中に引き入れるなど、できるはずがありません。万一できたとしても、その者達がこちらの思惑通りに動いてくれるとどうして信じられるでしょう。後に禍根を残すこととなるのは間違いありません。それにあなた方を告発しようにも何の証拠もないのですし、そもそもあなた方がここにおいでになったのは、あの花のことが決まる前です。それでは話の筋が通りません」
「君はそう進言したのかな?」
「僕も含め、側仕えの者全員が一斉に。6人全員に反対されては、さすがにルーディン様もフォンギレンホール卿もその案を通すことは諦められました」
 いやぁ、お前さんのご主人様が、人の意見に耳を貸すという偉大な能力を備えてくれていて助かったぜ。
 傍らでスケサブロウさんがふざけて笑う。いくつかの失笑がそれに続いた。クリスが一瞬で顔を赤く染める。

 騒ぎは起こしたくない。事を大きくしたくない。でも何とかして僕達を罠に嵌め、陥れたい。
 ホントにバカだな、あいつら。

「とにかく」カクノシンさんが話を続けた。「それで君達は策に窮した訳だ。……さっき君は言っていたね。君があの花を返して欲しがっていることに、タウシュミットが気付いたと」
 はい、とクリスが大きく頷いた。

「時間もなくなってきて……ルーディン様が仰ったのです。クリス、お前が行って何とかしてこい。何か手を考えて、あの花を奪ってこい。そうすれば……花を返してやろう、と……」

 つまりタウシュミットは自分で作戦を練ることを放棄した訳だ。本当に士官の適性に欠けてるんじゃないのか、あいつ。

「その言葉を信じたのかい?」
 その質問には、意外なほど素早くクリスが首を左右に振った。
「ご当主様が陛下に献上するとお決めになったことを、ルーディン様が覆すことなどできません。お父上には絶対に逆らえない方ですから……」
「じゃあどうして?」
「……あなた方には申し訳ないですが、これが上手くいってルーディン様のお役に立てれば、花を返して頂くのは無理でも、何らかの褒賞が我が家に与えられると考えたのです。少しでも姉に報いてやれればと……。あの方は……少なくとも、仕える者へのそれ相応の見返りを惜しむ方ではありませんから……」
「君はずっと彼に仕えてきたのかい?」
 はい、とクリスが頷く。
「先ほども申しましたが、僕の家は代々タウシュミット家に仕えてきました。ですから僕は、生まれた時からルーディン様にお仕えすることが決まっていました。実際には、成人の儀を迎える5年ほど前、ほとんど物心つくかつかない頃からお側にいます」
「なるほどね……」
「そういう者は5人ほどいます。僕達は常にルーディン様のお側で、ご不自由のないようお仕えして参りました。ですからルーディン様のお考えになる事なら大体の事は分かります。ルーディン様も僕達をご信頼下さっておいでですし……。時折…周囲にいる者の忠誠心をお試しになる様な事をなされはしますが……」
 自分に自信がないからだ。アーウィンが呟く。
「でも決して無体な真似をされる方ではないのです……!」
「彼が今、ここにいる同期生達に対してやっていることが、無体な真似ではないと?」
 クリスがきゅっと唇を噛む。
「フォンギレンホール卿がご一緒ですから……気が大きくなっておられるのかもしれません。……フォンロシュフォール卿も」
 そう言って、クリスがアーウィンにちらっと視線を向けた。
「あまり熱心なご様子ではありませんでしたが、ルーディン様はお味方だと信じておられました」
 アーウィンが軽く肩を竦めて見せる。それを答えと受け止めたのか、クリスがため息をついて視線を戻した。
「……僕はこれで失礼します」
「どうするんだい?」
「昨夜、シュトレーゼン君達が合流していたことは知っています。でもまさか今夜も一緒だとは思いませんでした。あなた方も含めてこれほどの人数が揃っているとは……。それをお伝えすれば、僕が何もできなかったとしても罰を与えようとはなさらないでしょう。あの……」
 クリスがカクノシンさんをひたと見つめた。
「ここでお話したことを、ルーディン様達には……」
「殊更言いつけようとは考えていないよ。でも君は、それでいいのかい?」
 魔石の花のことを尋ねたんだろう。その問い掛けに、クリスはただ小さく、そして哀しげに微笑んだだけだった。
「話を聞いて下さって、ありがとうございました。あの……」
「何だい?」

 これは決して悪意で申すのではないのですが。
 そう前置きして、クリスは言った。

「ルーディン様達に、その……これまでの無礼を謝罪して、ご勘気を緩めて頂こうとする訳には……いかないでしょうか?」

 落ち着いていたはずの部屋に、ざわりと、怒りを含んだ気が満ちた。
 僕の中にも瞬時に熱いものが湧き、思わずクリスを睨みつけてしまった。
「何も無礼などしていないのに、謝罪することなどできないね」
 一斉に全員が、もちろん僕も、大きく頷く。
「あなた方のために言ってるんです!」
 クリスが音を立てて立ち上がり、声を張り上げた。
「そして! もちろん君達の、ここにいる全員の将来のために! フォンロシュフォール卿、そしてフォングランツ卿、あなた方も含めて、このままでは全員大変なことになります!」

「……それ、どういう意味?」
 ミツエモンが、訳が分からないという顔で尋ねた。僕もさっぱり意味が分からない。そりゃあ…十貴族の関係者に嫌われて良いことはないだろうけど……? 仲間達が不安げな表情を顔に浮かべ、そして「大変なことになる」と断言されたエドアルドとアーウィンもまた、唖然とした様子で顔を見合わせている。気になるのは……カクノシンさん、スケサブロウさんの表情も一気に険しくなったことだけど……。

「これはもちろんご存知でしょうが、フォンビーレフェルトのご当主様の甥子であられるヴォルフラム殿下、いえ、閣下は、魔王陛下の婚約者でいらっしゃいます。いずれは魔王陛下の伴侶となられるのです。そうなれば……」
「そうなれば、十貴族の中でもビーレフェルトの権威が一気に高まる、権力だって握れる、と言いたいわけかい?」
 スケサブロウさんに頭の上から問い掛けられて、驚いたように顔を上げたクリスがコクリと頷いた。
 なるほど…、と頷きかけたら、スケサブロウさんが「けどな」と言葉を継いだ。
「ビーレフェルトの連中が夢見る権威だの権力だのが本物になるためには、当のヴォルフラム閣下と誰より魔王陛下の後押しが必要だぜ?」
「つまりそれって、おれ…げふごふ、魔王、陛下、が、ビーレフェルトの一族をえこひいきするってことか?」
「えこひいきだなんて、そんな……」ミツエモンの言葉にクリスが慌てる。「ですがその……そうなるのではないのですか…? あの、ヴォルフラム閣下がフォンビーレフェルトの一員として、一族の名誉と繁栄のために力を尽くされるのは当然のことですし、それに……魔王陛下も、最愛の伴侶であられるヴォルフラム様の一族にはそれなりの敬意を払われるのではないかと……」
 さいあい〜? ひっくり返った声を上げながら、ミツエモンがずるずると沈んでいく。
「つまり」カクノシンさんがわずかに硬い声で続けた。「魔王陛下と結婚すれば、ヴォルフラム、閣下は、一族の権威を高めるために陛下に色々と運動してくれるだろうし、陛下も愛する閣下のお望みとあれば、喜んでそれを受け入れてくれるだろう、と?」
 あいするはやめて〜、とテーブルの下から情けない声が漏れ聞こえてくる。……何やってんだ? あいつ。
「その様に仰ると軽々しく聞こえますが……でも、そうです。ヴォルフラム閣下を通して、魔王陛下とビーレフェルトは真っ直ぐ繋がることとなり、そうなれば、フォンビーレフェルトの十貴族の中での権威が高まるのも自然なことではないでしょうか」
 なるほど、とカクノシンさんが頷いた。
「しかし陛下のお側には宰相であるフォンヴォルテール卿や王佐のフォンクライスト卿がいる。それから…これは忘れているのか、それとも気付かない振りをしているのかは知らないが、大賢者猊下もおいでになる。彼らはそのような形でビーレフェルトの権威が高まるのを良しとはしないだろう。彼らをどうするつもりか、君は知っているのか?」
 ウェラー卿を忘れてもらっては困る! 隣でエドアルドが不服そうに呟く。そうだよ、陛下のお側にはウェラー卿がおいでになる。陛下のウェラー卿へのご信頼は、誰にも増して篤いと聞いているし……。
「僕のような者には、そこまでは何も……! ただ……」
 ただ? カクノシンさんが繰り返し、クリスが「はい」と頷く。
「これは、タウシュミットのご当主が仰せになったことですが……。魔王陛下とヴォルフラム閣下のご結婚が成った暁には、眞魔国のため、若きご夫婦のため……」

 フォンビーレフェルトのご当主様は、フォンヴォルテール卿に成り代わり、宰相の位におつきになるのが良い、と。

「何だってーっ!!」
 テーブルの下からミツエモンが飛び出してきた。
「なっ、何でそうなるんだよっ!?」
 全くだ!
 同時に全員が同じ考えを抱いたらしい。座っていた者も一斉に立ち上がると、揃って強い視線をクリスに向けた。
 皆の迫力に圧倒されたのか、クリスがおろおろと周囲を見回す。

「その答えなら、さっきちゃんと言ってたよな」
 スケサブロウさんの、低い、そう、獣の唸り声のような声がした。
 ああ、とカクノシンさんの言葉が続く。

「魔王陛下の伴侶となったヴォルフラム、閣下が、自分の一族の長こそ国の宰相にふさわしいと陛下に進言し、陛下がそれを快く了解してくれる。と、ビーレフェルトの一族は信じている訳だ」

 ミツエモンの上半身が、ばったりとテーブルの上に倒れた。額でも打ったのか、その後ぴくりとも動かない。

 まったく……と、スケサブロウさんが吐き捨てる様に言った。
「そうなりゃ確かにビーレフェルトの一族はこの世の春だ。こいつはまさしく、シュトッフェルの再来、だな」
 「アホくさ」と嘲笑うスケサブロウさん。その隣でカクノシンさんが深々とため息をつく。

「なるほど、君はそれが実現すると思ったから、我々のことを心配してくれたわけだね。未来の宰相閣下とその一族に逆らうと、大変な事になる、と」
「は、はい、そう、なのです、が……」
「なるほど、よく分かった」
 心配してくれてありがとう、と、皮肉ではない様子でカクノシンさんがクリスに笑いかけた。
「ところでその、いずれは宰相にという考えは、タウシュミットの当主の意見なのかな? それともフォンビーレフェルトの当主本人の?」
「わ、分かりません……。僕もタウシュミットのご当主様がそう仰せになったのを聞いただけですので。……ヴォルフラム様が魔王陛下の伴侶となられ、ビーレフェルトのご当主が宰相閣下となられれば、我らタウシュミットも政権の中枢で力を振るえるようになると。ですから僕……」
「……国家の指導者という立場を何だと思っているんだ……」
 うんざりと言うカクノシンさんに、振るうまともな力がありゃあね、とスケサブロウさんも呟いた。

「………信じらんね〜……」

 テーブルからくぐもった声が漏れてきた。

「ありえねーよぉ……」
 ミツエモンのぐったりとした声。

 あの、とクリスが不安そうにカクノシンさんに声を掛けた。
「何かな?」
「あの……今申し上げたことは、あり得ない、のでしょうか…? タウシュミットはもちろん、ビーレフェルトのご一族の皆様は、これから我らが国を動かしていくのだと気勢を上げています。僕も話を伺った時には、なるほどそうかと納得したものですが……。それに、歴史を振り返ってみましても、魔王陛下や妃殿下、もしくは夫君殿下を輩出した家は、必ず勢力を強めていたはずです」
「確かにこれまではね。しかし、当代陛下とその宮廷はこれまでとは違う。それを知らない君達はまだしも、ビーレフェルトの当主までもが本気で権力を握れると信じているとしたら……ちょっと救いようがないね。まあそこまで愚かだとは思わないが……」
 とにかく、とカクノシンさんがクリスと向き合う。
「タウシュミット始め、一族の人々は大切な事を見落としている。まず第一に、フォンビーレフェルト卿ヴォルフラム、閣下、という人が、いざ魔王陛下の伴侶となったその時に、自分が一体誰のため、何のためにこれから働くべきなのかをちゃんと見極めることができる人物だということだ。彼は自分の名前に付きまとうしがらみなどに惑わされたりしないよ」
「そ、それは……」
「第二に」カクノシンさんがきっぱりと続ける。「魔王陛下は恋に目が眩んで、判断を誤るような方ではない。どれほどヴォルフラム閣下を思っておられようと、陛下は筋の通らぬわがままを叶えるような愚かな王ではない」
 僕もそう思う、と、隣でアーウィンが呟いた。陛下は英明なお方だ、と。僕もエドアルドも、その通りだと頷いた。……ところで、ミツエモンは何をやってるんだろう。カクノシンさんの片腕にすがり付いて、一生懸命頭を振りたくってるけど。
「第三に、魔王陛下もヴォルフラム閣下も、フォンヴォルテール卿に絶対の信頼を置いている、いや、置いておられる。特にヴォルフラム閣下の兄、上、への愛情と信頼は篤く、魔王陛下の御世を支え得るのはフォンヴォルテール卿以外にいないと明言して、されて、いる。いくら伯父の願いだろうが、この兄上を追い払おうとヴォルフが、あ、いや、ヴォルフラム閣下がなされるはずがない」
 筋の通った説明の連続に、部屋に集う全員が一斉に頷いている。
「そして第四に……」
「僕、分かります!」
 いきなり隣で声がした。
 びっくりして見ると、エドアルドが片手を高々と上げている。
「分かるのかい?」
 はい! とエドアルドが力強く宣言する。
「もちろん! 陛下のお側にはウェラー卿がおいでになるからです! コンラート閣下がフォンビーレフェルトのそのような愚かな企み、きっと即座に粉砕なされるに決まっています!」
 おお、と皆の賛同の声が上がったが……カクノシンさんは「はは…」と力なく笑っただけだった。
「ああ、いや、それもないことはないだろうけど……俺が言いたかったのはそうじゃなく」
「は?」
「……君達は知らないからね」
 何を、だろう……?

「大賢者猊下のはらぐ……偉大さを」

 その瞬間、カクノシンさんと、その腕にすがり付いていたミツエモンと、その隣に立っていたスケサブロウさんが、揃ってどこか遠い世界に視線を向けたような気がした……。


「井の中の蛙、ですね……。ビーレフェルトの中で、ビーレフェルトの人々の話しか聞いていないからこうなってしまうんだ……。勉強してきたつもりだったのですが、僕もいつの間にか、ビーレフェルトの価値観とその視点からしか世界が見えなくなってしまっていたんですね……」
「それが分かっただけでもいーじゃん!」
 ミツエモンが気楽に笑って、ぽんとクリスの二の腕を叩いた。クリスが苦笑を浮かべる。
 今、とにかくタウシュミット達のところに戻るというクリスを見送るため、僕達は全員で彼を囲んでいたりするわけだ。……同じ取り囲むにしても、最初とは大分雰囲気が違っているのは確かだ。実際のところ、何がどう解決したわけでもないけれど。
「そうですね……。でもだからといって、僕の現在や将来が変化するわけではありませんが」
「……クリリ…」
 慰めようと手を伸ばしたミツエモンが、ハッとなってちらりと僕を見上げた。
 何を言いたいのか分かったから、「ちゃんとしろ」という気持ちを込めて頷いてやる。

「あ、あのさ」
 ミツエモンがクリスの顔を覗きこみ、おずおずと尋ねた。
「クリリンって呼んでも……いい……?」
 上目遣いで、小首を傾けて、じっと見つめるミツエモンに、一瞬呆けたような顔をしたクリスが、次の瞬間真っ赤になって背筋をぴょんと背筋を伸ばした。
「…あっ、あの……っ、いい、です、も、もちろん……! えっと……とっても、可愛い……ですし……」
 ……可愛いのは愛称か? それともミツエモンか? ……ったく、アレは反則じゃないのか!?
「じゃあ、クリリン!」
 さっそく張り切って呼んでるし。
 ミツエモンはクリスの両手を取ると、にっこりと笑って言った。

「あの魔石の花、あれさ、持って帰りなよ!」

 はあっ!?  

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………おや? 事件が起きない……。
いえ、そう大した事件が起こるわけじゃないと、前回申しておりましたが。
それにしても、会話ばっかり。……何で?
どうして私って、頭の中のイメージどおりに文章にできないかなあ……。
でも、ま、とにかく突き進んでいこうと思います。
どうか最後までお付き合い下さいませ。
よろしくお願い申し上げます。心から!

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