フィールド・オブ・ドリームゲーム・7



 夜会は盛況だったな。
 元の道を戻りながら、カーラはふと思った。

 叱り付けたと思った途端にアリーの化粧を直し始めたサンシアのおかげで、新連邦代表団は無事全員が夜会に出席した。
 現在の新連邦では思いも寄らない絢爛豪華な夜会。
 溢れる灯。流れる音楽。惜しげもなく振る舞われる、贅沢極まりない料理や酒、新鮮な果物に果汁、そして菓子。
 これがシマロンの、いや、大陸の多くの宮廷の夜会であるならば、おそらくカーラは「貧しい民を搾取して…」と眉を顰めたかもしれない。しかしこの国は違う。違うはずだ。
 宮廷生活を覚えているカーラにしても、初めて目にしたかと思うほど華やかな夜会の雰囲気と、テーブルから零れ落ちんばかりに盛り付けられた、目にも楽しい料理や菓子の数々に、倹しいながらも正装に身を包んだアドヌイとゴトフリーはもちろん、顔を曇らせていたアリーや、一気に大人になったようなレイルまでもが、興奮に頬を赤らめ、目を瞠ってきょろきょろと周囲を見回していた。

「……このような夜会、何年振りであろうか……」
 ふいに耳に飛び込んできた声に振り返れば、クォードがどこかしみじみと大広間と、そこに集まる人々を眺めていた。しんみりした様子でいながら、いつの間にかちゃっかり酒のグラスを手にしているところはさすがだ。
「新連邦での慎ましい夜会に不満を持ったことはないが、さすがにこれだけのものを目にするとな……。それにしても、またこのような夜会に出席できるようになるとは……。思えば、長き日々であったことよ」
 レイル達の傍らに、盆を手にした男がにこやかに近づいていく。盆の上には様々な形のグラスが並び、様々な色の飲み物が注がれていた。年少組のそれぞれが果汁か、もしくは酒のグラスを手に取っている。ほんのり赤い飲み物の入ったグラスを手に取るアリーの顔に、多少ぎくしゃくしているものの、紛れもない笑みが浮かんでいるのを確認して、カーラはホッと息をついた。
 盆を持つ男がカーラ達の元にもやってきた。軽く礼を言って、グラスを手に取る。

「そろそろ魔王陛下がお出ましになられますぞ」

 近づいてきたのはヒスクライフだった。
 やはりグラスを手に、にこやかにやってくる。

「今回の主賓は表向きカヴァルゲート野球ちーむです。ですが、お気づきですか? 皆、あなた方に注目しているのですよ?」
「我々が、かつての仇敵であった『元大シマロン』だからですか?」
 カーラの質問に、とんでもない、とヒスクライフが笑う。
「あなた方が、大シマロンを倒した人々の代表だからですよ。……ところで、どうしてこのような端で固まっておられるのかな? 今夜の宴には、眞魔国の名だたる貴族達はもちろん、駐留する大陸諸国の代表達も集っています。皆、魔王陛下とお近づきになれる機会は、どのような小さなものでも逃しませんからな。眞魔国側もそれが分かっているから、魔王陛下肝入りとはいえ、民間交流でしかない野球ちーむの歓迎会にこれだけの規模の夜会が開催されるのです。あなた方も、いわばこれが国家としての初外交にあたるのではないですか? お国のこれからのためにも、諸国の代表の方々と積極的に交流されるのがよろしいと思いますが?」
「おお、それは確かに貴公の仰せの通りだ! ……だが…いや、何とも恥ずかしい次第だが、その……このような夜会に、それも他国の宴に出席するのはそれこそ何年振りのことで、どうにも勝手が掴めぬと申すか……」
 元王太子とはいえ、ここ数年をほとんど戦場で過ごしてきた男の意外なほど素直な言葉に、ヒスクライフが破顔した。
「ああ! それは私の方がうっかりしておりました」
 そう言って、ヒスクライフが軽く頭を下げる。
「いや、むしろ申し訳ないことをしました。あなた方をお連れしたのはこの私。仲介の労を取るべきなのも、当然私の役目でした。では、魔王陛下へのご挨拶が済み次第、顔つなぎをしておいて損はないお歴々にご紹介させて頂きましょう」
「そ、それは! ……いや、ご面倒をお掛けするが、何とぞよしなにお願い申す」
「よろしくお願いいたします」
 クォードとカーラの2人に頭を下げられて、ヒスクライフが笑顔で手を振る。
「いやいや、どうぞ頭をお上げ下さい。それよりも、軽くつまみを口になされてはいかがかな? 本格的に宴が始まれば、おそらく食事どころではなくなりますぞ?」

 ヒスクライフの言葉を伝え、全員に心構えをさせて間もなく、魔王陛下のお出ましとなった。
 おお、というどよめきと共に、人々が一斉に顔を一方に向ける。
 漆黒の衣装に身を包んだ双黒の王の姿は、絢爛たる彩の中で際立って目立つ。闇の色でありながら、闇に沈まない。全ての人々の、まるで救いを求めるような視線が注がれるその存在は、むしろ闇に浮かぶ唯一の灯のようだ。
 陛下が歩を進めれば、柔らかな長衣がそのほっそりとした肢体に纏い付く様に流れ、縁取りだろうか、金糸銀糸が煌いて例えようもなく優雅だ。
 カーラは今日起きたすべての事を忘れて、惚れ惚れとその姿を見つめた。

「皆さん、こんばんわ!」
 王の座の前に立つ魔王陛下が、にこやかに一声を放たれ、宴が開会された。


 考えてみればおかしなものだ。
 ほんのりと温もりを増してきた陽射しを受けながら、ゆっくりと歩き続けるカーラは小さく笑みを頬に浮かべた。
 かつての身分など、何の意味もない。
 手にしていた地位も権力も、もはや遥か彼方に消えうせた。
 そうカーラ自身も思い、サンシア達からもさんざん言い聞かされ、真実その通りと思う言葉でありながら。
 面白いことに、夜会で新連邦という新たな、未だ建国の宣言すらしていない国家の初の外交において、最も威力を発揮したのはカーラ達のかつての身分だった。
 あまりに内向きになっていたため、反って認識が欠落していたのかもしれない。よくよく考えてみれば、国に対して反乱を起こし武力で国を乗っ取った者達が、突如国家の指導者だと主張したところで、最初からまともな外交交渉をしてくれるはずがないのだ。国益を鑑み、いずれは友好をと考えていたとしても、先ずは警戒して、相手の胸の内を探る辺りから始めるのが当然の対応だろう。ユーリの様に好意全開で真正面からぶつかってくる存在など、本来あり得ない。
 しかし。
 今回、眞魔国の夜会において、新連邦の代表としてやってきたのは、大国とは言えないまでも、古い歴史を誇っていたラダ・オルド王国の元王太子であり、かの名君エレノア・パーシモンズの孫達だった。
 ヒスクライフから紹介を受けた大陸各国の代表達、また駐留外交官、そしてその一行達は、驚きと安堵の表情を如実に表すと同時に、彼等に向かって両手を大きく広げてみせたのである。
 クォードは、かつてラダ・オルドの、文武両道に秀でた美貌の王太子として名を馳せていたこともあり、瞬く間に妙齢のご婦人達に囲まれてしまった。
 そしてカーラ達はといえば。
「おお、では貴方様方がエレノア陛下の……。私は以前、一度だけ御国に参ったことがございます。平和なよい国でありましたな。……それで、陛下はお元気でいらっしゃいますか?」
 落ち着いた風貌の外交官が、懐かしそうな眼差しを向けてくる。
「元気に致しております。ですが……祖母はもう『陛下』と呼ばれる者ではございませんので……」
「しかし、新たな国家の最高位にあられることに変わりはございますまい。かのエレノア陛下が、大シマロン亡き後、新たな国家の指導的立場にお就きになるということがはっきりすれば、諸国も安堵いたしますことでしょう」
 その言葉に、彼等を囲む人々から一斉に同意の呟きが漏れた。
「それにしても」別の、初老の男性が声を発した。「貴方の父上始めご一族が大シマロンによって処刑されたと耳にした時は、私も世の理不尽に涙したものですが……。しかし、その御子である貴方方がこのようにご立派に成長なされたとあれば、エレノア陛下はもちろん、泉下のご一族もさぞお喜びでしょうな」
 ありがとうございます、とカーラ、アリー、レイルの3人が揃って頭を下げる。
「でも、カーラ、ええと、カーラモンド、様……?」
 外交官夫人である女性が、おずおずと口を挟んできた。
「カーラで結構です。仰々しい名は、かの戦の折に捨てました。今はただカーラと。妹も、アリステアではなく、アリーと名乗っております。昔からの…愛称でもありますし」
 さようですの、と夫人が頷く。
「それではカーラ様。ドレスはお召しになりませんの?」
 好奇心を隠さない質問に、カーラは思わず笑みを浮かべた。
「大シマロンとの戦でさんざん剣を振るっておりましたら、うっかり自分が女性であることを忘れてしまいました。今ではすっかりこのように」
 まあ! とその場に居合わせたご婦人方が一斉に口に手を当てる。
「では、カーラ様、あなたも男性に混じって戦場に!?」
「はい。恥ずかしながら、これでも一応一軍を指揮いたしておりましたので」
 おお、とどよめきがその場に上がる。と、同時に、男性達、特に20大から40代ほどの年代の男達が、わずかに鼻白んだように表情を変えた。
「……そ、それで、アリステア様は……」
「アリーとお呼び下さい」
「ああ、失礼、そうでしたわね。その、アリー様と、それからレイル様は、やっぱりその……戦場に?」
 いいえ、と2人が揃って顔を左右に振る。
「私たちはとてもお姉さ…姉のようには……」
「年齢もありますが、残念ながら力が足りず、戦の間はほとんど後方に控えておりました。……王族に生まれた男子として恥ずかしいのですが……」
「とんでもありませんわ、レイル様! お二人とも大シマロンの侵攻を受けたときは、まだ子供でいらっしゃったのでしょう? それなら当然のことですわ! それに……平和な国においては、あまり武張った性格というのも困りものですし……」
 おそらくは適齢期の息子、もしくは娘を持つご婦人達、それから独身と思しき男性達の視線が、揃って愛らしく装ったアリーと、上品でおっとりとした面立ちのレイルに集中している。
 内心苦笑する思いで、カーラは自分達を取り巻く人々の顔を見遣った。
 つまり私は失格というわけだな。彼等の家の……花嫁候補として。

「私達、また認識を改めなくちゃならないわね」
 飲み物を取りに妹達から離れたカーラの傍らに、サンシア達が苦笑いを浮かべて歩み寄ってきた。
「同じ人間でありながら、国家の支配階級にいる彼等が私達をどういう目で見るか、私としたことがうっかり失念していたわ」
「人間である大陸諸国との外交交渉においては、私達のかつての身分や地位が重要な武器になるということだな」
 どこか悔しそうなサンシアに、カーラは苦笑ではない笑みを顔に浮かべて答えた。
「その通り、と言ったら、あなたは怒るかしら?」
 今度こそ苦笑して、カーラは首を振った。
「クォード殿はどう答えるか分からんがな。だが、実を言えば私もつい今しがたそれに気付いて、なるほどと感心したばかりなんだ」
 カーラの口調に、文官達がホッと息をつく。
「私達じゃ駄目なのよね。少なくともこんな宮廷外交は私達には無理みたい。各国の代表はもちろん、外交官も、私達をうさんくさい目でしか見ないのよ。反乱のどさくさに紛れてこの場にやって来た場違いな奴等、みたいな目つきでね。1つ2つ格下の武官や文官はまだましなんだけれど。正直ムッとするけど、これはまあ……仕方がないんでしょうね。魔族と違い、人間世界の身分に拘る人達にとって、元ラダ・オルドの王太子や、名君と名高いエレノア様の孫という血筋や身分は決して過去のものではないわ。そう、あなたの言う通り、貴方達のかつての身分は私達にとって重要な武器よ。……実際、この国の社交界に、これほど人間達が入り込んでいるとは思わなかったのだけれど、おかげで事実の認識という点では大いに助かったわ」
「考えてみたら、新連邦建国についての周辺諸国への根回しは、エレノア様のご指示で、議会に所属する元どこぞの国王とか王族とかに任せていたんですよね。それくらいは働けって思ってたんですけど……」
 タシーがくすっと唇の端を上げて見せた。
「あの人達もそれなりに役に立ってたってことだったんだ」
「その辺りは、エレノア様がよく分かっておられたってことね。……ねえ、カーラ?」
 名を呼んで、サンシアはちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「思うんだけど。今夜あなたがドレスを着ていないのは、宮廷外交を展開するという点においては大失敗だったわね?」
 サンシアの笑いにカーラも同じ笑顔で応えた。
「ああ。彼等がどう勘違いするかは別にして、彼等の懐に飛び込み、外交を円滑に行うためには、私も確かに『女装』すべきだったと少々後悔している」
 女装ねえ……。言って、サンシアとカーラは揃って吹き出した。

「私が頑張るわ!」

 いきなり、その場に気合のこもった声が響いた。

「……アリー」
 いつの間にやってきたのか、アリーが拳を握り締め、瞳に決意を漲らせて立っている。
「わ、私が! お姉さまの代わりに各国の人達とお話して、これからの外交に役立つように交流を深めるわ! 今も、どこかの国の王家の方からダンスに誘われてるの! たくさんお話して、ダンスもして、いずれ新連邦と友好を結んでもらえるように、その役に立つように頑張るわ!」
 言ってアリーがきゅっと唇を引き結ぶ。その緊張した口元に妹の決意を見て、いけないと思いつつ、カーラは頬がほっと緩むのを止められなかった。
「ああ。私は今回、ダンスは到底無理だからな。アリー、その辺りの交流はお前に頼るしかない。頼むぞ?」
「あなたとレイルが頼みの綱よ。私達なんて、あの方々に鼻も引っ掛けてもらえないんですもの。頼りにしてるわ、アリー」
「我が国の将来のために、どうか頑張ってください。アリー殿、そしてレイル殿」
 見ると、レイルもまた彼等の側に歩み寄ってきている。
「はい、頑張ります。……じゃあ、行こうか、アリー。あちらで僕達の話を聞きたいと仰っておられる方々がお待ちになっているよ? それから君とダンスを踊りたいって申し出てきた男性も何人かおいでだ。……僕達はあまり経験がないけれど、父上達がなされていた外交手法を思い出して実践してみよう」
「王族に相応しい宮廷外交ね」
 その通り、と答え、レイルが手を差し出す。それにアリーが自分の手を重ねて、それから2人は静々といかにも上品な足取りで人々の元に戻っていった。

「アリーも少しは立ち直ったみたいね」
「自分にもやれることがあると分かって、ホッとしたんだろう」
「では、カーラ。あちらにあまり身分だの、それから結婚相手の条件などに拘らない新興都市国家の代表の方々が集まっておられます。一緒に行って、ご挨拶して頂けませんか?」
 ラースの言い様に吹き出しながら、カーラは頷いた。
「そうしよう。まあ、いくら進歩的な国の方々とはいえ、髪の手入れより剣を手入れする方が得意な女を妻に迎えることには、さすがに躊躇すると思うがな」

 そうして彼等が彼等なりの外交を進めてしばらく経った頃。カーラ達の元にようやく魔王陛下が近づいてこられた。
「カーラさん!」
「陛下」
 呼びかけに応えて、カーラ、そして共にいたサンシア達官僚が頭を下げる。
「ごめんなさい。もっと早く皆さんとお話したかったんだけれど、何だか色々つかまってしまって……。楽しんで下さってますか?」
 心配そうに首を傾げて問う魔王陛下に、カーラは笑みを浮かべて大きく頷いた。
「楽しむだけではなく、実に有意義な時間を過ごさせて頂いております。公式には随員に過ぎない私どもをこの場にお招き頂きましたこと、心から感謝申し上げます」
 カーラの言葉に、魔王陛下がホッとしたように頬を緩ませた。
 今、ユーリの傍らには、宰相閣下、王佐閣下、コンラート、フォンビーレフェルト卿、グリエ・ヨザック、クラリス、そしてヒスクライフという、お馴染みの面々が揃っていた。
 コンラートは、自分達と話した内容を忘れてしまったかのようににこやかに、主と自分達を見ている。……いや、ユーリだけを見つめている。
「あの方も」
 ふいにヒスクライフが言葉を挟んできた。
「すっかり夜会の勘を取り戻したようですな」
 言われて顔を巡らせると、カーラ達の視線の先にはクォードが立っていた。
 いつの間にか10数人の人々─そのほとんどが女性─に取り囲まれ、満面に笑みを浮かべながら、身振り手振りも大げさに、何やら懸命に力説している。時折、わっという明るい笑い声がその場で沸き起こっていた。
「妹御もダンスを楽しんでおいでのようだな」
 宰相閣下に言われて、「お陰さまで」とカーラは軽く頭を下げた。
「明日ですけど」ユーリが思い出したように声を上げる。「楽しみにしてるとアリー達に伝えておいて下さい」
「そのことですが、明日は私もご一緒させて頂こうと思います」
「カーラさんも野球を!?」
「はい。その……実はクォード殿も同行することになりましたので……」
 何ですと!? と一瞬声を荒げた王佐閣下の耳元で、コンラートが素早く何かを囁いた。と、王佐閣下の表情がふいに変化し、すぐに「なるほど」と頷いたかと思うと、そのまま視線をカーラに向けてきた。
「あなた、カーラ殿」フォンクライスト卿の声に力が籠もっている。「よろしくお願いしますね!」
 畏まりました、と、苦笑を浮かべながら頷くカーラと自分の側近を、魔王陛下がきょとんと見比べている。
「それから……陛下」
 改めて呼びかけられて、ユーリが「はい?」とカーラを見上げた。
「申し訳ございませんが、レイルは明日、ご一緒できないこととなりました」
「どういうことだ?」
 コンラートが眉を顰めて質問してくる。
「レイルは」カーラはコンラートではなく、ユーリに向かって答えた。「ぜひ御国の行政を学びたいと希望いたしまして、明日は彼等、我が国の文官達と共に行動することとなりました」
「行政を?」
 はい、と答えて、ちらりとコンラートを見遣る。
「自分はいずれ行政部門で民のために力を尽くしたいのだと……。そのため、私やアリーとは別行動することを自ら選択いたしました」
「レイルが……」
 ようやく自立を決意したか。コンラートの呟きは、しっかりカーラの耳に届いた。そこで初めて、カーラは真正面からコンラートに顔を向けた。
「いずれこうなると分かっていたのか?」
「分かっていたというよりも、むしろ当然のことだろう? レイルはしっかりしているし、頭も良い。いつまでも君や、もちろんアリーの背中を追いかけていて良い筈がない。違うか?」
 レイルは伸びるぞ。そう言うと、コンラートはカーラの背後に控えるラースに目を向けた。
「うまく育ててやってくれ。いずれ必ず新連邦を背負って立つ人材になる」
 は、とラースが頭を下げる。
 必要とあれば新連邦を滅ぼすとすら堂々と宣言していながら、こんなセリフも自然に口にできるのか。
 カーラは視線を伏せて1人ごちた。
 コンラートの言葉の、そのどちらも嘘はない。
 新連邦が眞魔国と魔王陛下にとって益のある存在である限り力を貸すが、害をなすとなれば滅ぼす。
「……国家と王に忠誠を尽くす者として……当然の判断か……」
 ではそろそろあちらへ、と王佐閣下に促され、魔王陛下が頷く。が、ふいに顔を上げると、まじまじとカーラを見つめ始めた。
「……陛下?」
「カーラさんは……いつ見てもカッコ良いなあ……」
 は? カーラはもちろん、全員の視線が思わず美貌の王に集中する。それに気付いたユーリが、照れくさそうに笑った。
「あ、ごめんなさい。だって……カーラさん、いつも綺麗で、背筋がぴんと伸びてて、凛々しくて、いかにも仕事が出来るって感じで、カッコ良いなーと思って……」
 羨ましいなあ……。しみじみと言うと、呆気に取られて見つめるカーラの目の前で、ユーリははあぁ、と息を吐き出した。それから隣で、同じようにまじまじと自分を見つめているコンラートを見上げて言った。
「コンラッドもそう思わない?」
 見上げられたコンラートは、一瞬きょとんと目を瞠ってから、にっこりと笑みを主に投げ掛けた。
「カーラはいつもこんな感じですからね。特に意識したことはありませんよ」

 そう。コンラートはただの一度として、自分を特別な存在としても、もちろん女性としても、意識したことはなかった。
 大シマロンを倒すという使命を自らに課した者同士。ただそれだけ。同志ですらない。
 その先に見つめるものが、自分達は全く違っていたのだから。

「陛下」
 カーラの呼びかけに、ユーリが顔を上げる。
「私はこれっぽっちも『カッコ良く』などございません」
「……カーラさん…?」
 きょとんと見上げるユーリの、澄んだ大きな黒瞳に吸い込まれるような気分になりながらも、カーラは苦笑を浮かべてみせた。
「私はいつも自信がなくて、おろおろしてばかりなのです。誰かにしっかり行く先を照らしてもらわなくては、しっかりしろと背を叩いてもらわなくては、1歩も進めないほどの小心者でもあります。いつもいつも迷ってばかり、同じ場所で立ち止まってはうろうろとするばかりの情けない人間なのです。陛下の目に、私が仰せの様に映るとすれば、それはただ私が意地っ張りの見栄っ張りであるという、ただそれだけの理由かと存じます。……お褒め頂き光栄ではありますが、陛下のお言葉は全く的を得ていないと申し上げるほかございません」
 ご無礼、お許しください。そう言って頭を下げ、そして上げる。と、カーラの瞳が、表情を消し、じっとカーラを見つめるユーリの瞳とぶつかった。
「………陛下……?」
「カーラさんは」
「はい……?」

「……まだ…コンラッドが必要だと思ってる……?」

 ハッと目を瞠るカーラの背後で、サンシア達官僚が息を呑む気配が伝わってきた。
 コンラートもまた、「陛下!?」と焦ったような声を上げている。

「カーラさん、それから……新連邦の人達は……まだコンラッドがいてくれないと困るって思ってますか?」

 一瞬、どう答えるべきか、カーラの中に迷いが生まれた。
 そして迷う自分を恥じた。
 つい先程のことではないか。
 自分達のことなどどうでもいいと。主のためにならないと判断したその時には、共に戦場を駆け抜けた自分達を容赦なく滅ぼすと。ああもきっぱり宣言されて。
 そんな男がまだ必要なのかと問われて、一笑に付すことのできない自分を、カーラは心底恥じた。
 だが。
 ユーリの命令が、新連邦のために働けという命令があれば、コンラートは決して手を抜くことをしないだろう。
 コンラートの本心を知っているのは自分達だけ。国で待つ皆は、今もコンラートがいてくれたらと思い、彼が戻ってくることを願っている。
 カーラは、視線をわずかに傍らに控えるラース達に向けた。
 ラース達が今、コンラートに投げ付けられた言葉と、彼の必要性を秤に掛けて計算したら、彼等はまず間違いなくコンラートの言葉を記憶から追い払い、彼の再派遣を願うだろう。
 だが……。
 カーラの脳裏に、ムラタ猊下やコンラートのあの眼差し、そしてレイルの声が蘇る。と、その時ふいに背後で誰かが動く気配がした。
「陛下! おそれながら、我らは未だ多くの課題を抱え………っ、カーラ殿!?」
 耳元で、ラースの不審げな声がする。カーラは深く息を吸って、胸の鼓動を整えた。
 咄嗟だった。
 カーラの予想通りコンラート派遣を願い出ようとしたのだろう、前に踏み出したラースを、カーラは咄嗟に腕を伸ばして遮ったのだ。

「駄目ですから」

 ハッと見ると、自分達の様子をじっと見つめるユーリの、静かな、だが紛れもない決意の籠もった表情がそこにあった。

「前は……クーちゃんとバーちゃんに頼まれて、辛い思いをしている民のためにと思ってコンラッドにシマロンへ行ってもらったけれど、でも……もう絶対に駄目です。コンラッドは、もう充分あなた達を助けたはずです。そうでしょう? コンラッドはおれの、眞魔国のコンラッドなんです。ウェラー卿コンラートなんです。眞魔国とおれにこそ、必要な人なんです。だから……どれだけあなた達が望んでも、もう二度とコンラッドを貸してあげることはできません。おれは、もう絶対、絶対絶対、コンラッドから離れたりしません……! だから……カーラさんは」

 誰かに頼るんじゃなく、自分の力で迷いを吹っ切って、前に向かって進んで下さい。

「陛下……」
「生意気なことを言ってごめんなさい」
 ちょこんと頭を下げるユーリに、カーラは「いいえ」と首を振った。
「私の方こそ、浅はかなことを申しました。……仰せの通りです。新たな国家を造り上げるのは、その国の民である我らの役目。どれほどその道が険しかろうと、迷っている暇などありませんでした。もちろん、陛下の御国の大切な方に無理をお願いするなどもっての外。愚かな繰言、どうかお忘れ下さい」
 いいえ、と微笑むユーリの周囲で、コンラートはもちろん、側近一同がホッと胸を撫で下ろしている。逆に、カーラの背後では、ラース達が重いため息を漏らしていた。
「宴を楽しんで下さい。それから、明日、ご一緒できるのを楽しみにしてます」

 自分達に背を向けて去っていく一行。
 それを見つめるカーラの目に、ユーリの手とコンラートの手が軽く触れ合う一瞬が映った。
 真正面を向いたまま歩き続ける二人の手が、無意識に互いを求めるように動き、触れ合い、互いの指先が絡み合う。瞬間、きゅっと結ばれた手はすぐに解け、また何事のなかったかのように元に戻った。

「……コンラートを自分の側から離さない、ではなくて、離れないと仰せだったな……」
 カーラ? 呟くカーラに、サンシアが呼びかける。
「そんな言い方があの方らしいと……思わないか……?」

 かつて、カーラ達はコンラートが魔族であることを捨て、人間として行きようとしているのだと信じていた。そしてそのために、彼が魔物達、何より恐るべき魔物の王である魔王に命を狙われているのだと思い込んでいた。
 コンラートが砦を離れていたあの一時期、カーラは毎日不安でならなかった。彼が命を奪われる瞬間を何度も夢に見て、うなされて、夜中に飛び起きることもあった。恐怖で胸が締め付けられるような思いを、何度も経験した。
 だが同時に、コンラートが共に生きることを望んでいるのは自分達なのだと、何の疑いもなく信じていた。信じていられた。
 あの時と今。
 私はどちらが幸せなのだろう。
 詮無いことと思いつつ、それでもカーラは考えずにはいられなかった。


「お姉さま!」
 ハッと顔を上げると、部屋に繋がるテラスに立ってアリーが手を振っていた。
「朝食の支度が整ったわ。頂きましょう!」

 朝風呂を堪能してご機嫌のバスケスとクロゥ、それからサンシア。
 視察の重点事項などについて、打ち合わせに余念のないラース、ロサリオ、タシー。
 彼等の会話に耳を傾けながらも、何かが吹っ切れたように明るく笑うレイル。
 やっと気詰まりな状態から解放されるかと、今日の予定に浮き立つアドヌイとゴトフリー。
 昨夜の夜会が上首尾であったことに、「良い夜会であった」と、満悦至極のクォード。
 そしてアリーは。
 今日は1日運動をするのだから、しっかり食べなくちゃと宣言して、朝食をもりもり口に運ぶ妹を見つめ、カーラは小さく微笑んだ。

 昨夜、「宮廷外交」に勤しみ、眞魔国と友好を結ぶ諸国の代表やその夫人達に笑顔を振りまき、何人もの紳士達とダンスを踊った妹は、その夜会が終了し、「お疲れ様」「ご苦労様」と働きを労われている間も、その笑みを顔に貼り付け続けていた。
 そしてドレスを脱ぎ、化粧を落とし、湯に浸かって疲れを落とし、そろそろ休もうと部屋の灯を消した後。
 そっとカーラのベッドに潜り込んできた。
 小さな声で「ごめんなさい」と口にする妹を、何を言わずに抱きしめてやり、そしてどれだけの時間が経った頃だろうか。
 アリーはカーラの胸に顔を埋め、懸命に声を殺て泣いていた。
 気楽な気分で、友達の国に遊びに来たアリー。そんな彼女を待っていた怒涛の1日。
 カーラにとっても、長い長い1日。

 もう、護ってやらなければならない小さな妹でも、弟でもないのだ。
 もう、アリーもレイルも、そんな存在であってはならないのだ。
 自分に出来ることは、それぞれの生きる道を見出し、己の足でその道を歩んでいく2人をただ見守るだけ。
「……今夜限り、お前達を子供と思うのはやめよう」
 カーラは妹の頭を、きゅっと胸に抱きこんだ……。



「こっち、こっちー!」
 ホールを抜けた広場で、魔王陛下が元気に手を振っている。

 本日「文化視察」をすることになっている人間達は、足早にその場所に向かった。
 結局、「本場の野球を見学し、野球の醍醐味を体験してみよう! こーす」とやらを選んだのは、アリーとアドヌイ、ゴトフリー、それからクォードとカーラとバスケスの6名だった。つまり行政視察とちょうど半々に分かれたわけだ。
 対して、眞魔国側はユーリ陛下とコンラート、フォンビーレフェルト卿、グリエ・ヨザック、クラリスの5名。
 全員が質素な服に身を包み、グリエとクラリスの2人は荷物を手に抱えている。
 魔王陛下は当然のことかもしれないが、髪を茶色に染め、どういう方法なのか、目の色までも変えていた。そしてさらに帽子を被り、眼鏡まで掛けている。
「……おお、姫……まるで初めて我等が出会った時の様な……。懐かしいと申すか、もったいないと申すか……」
 複雑な表情でクォードが呟いている。

 ユーリの表情は、カーラが見知っている無邪気な少年の顔だった。昨夜の宴で垣間見せた顔、コンラートを渡さないと宣告したあの大人びた表情の名残はない。
 そしてコンラートはといえば、やはりいつもの、いや、ユーリの側にいる時にいつも見せる穏やかな笑顔だった。
 主を愛しげに見つめ、自分達に投げ掛ける眼差しにも疚しさや心苦しさは微塵もない。
 ………なくて当然だ。何を考えているんだ、私は。
 カーラは自分の頭に浮かんだ表現に、自分で嘲笑った。
 昨日は言い過ぎた、済まなかったとでも言って欲しいというのか。
 意地でも平然としていようと、カーラは心に決めた。もちろん物欲しげな顔など絶対にしない。
 お前の言ったことなど、私達に何の影響も与えていないのだとはっきり表明するために。
 ……コンラートはは自分達がどう思っていようと気にも止めないだろうけれど。
 結局。
 自分は救いようのない意地っ張りの見栄っ張りなのだ。

「陛下、本日はわざわざの……」
「あ、今日はそれ、なしでお願いします!」
 先ずはお礼を、と切り出すカーラを、ユーリが手を上げて遮った。
「今日のは一応公式行事……だよね。 でも、一般の民の中に入ることになるし、魔王がいるって分かったら混乱してしまうでしょう? 試合、っていっても練習試合なんだけど、それも邪魔することになるかもしれないし。ということで、今日は『陛下』はなし、敬語もなしでお願いします!」
「あ、じゃあ、今日は、ユーリって呼んでもいいのね!?」
 アリーが声を弾ませる。
 だが、「あのよぉ」と困った声も同時に上がった。バスケスだ。
「幾らなんでも、俺ぁ、陛下をお名前で呼ぶことはできねえなあ。……前はどうしてたっけ……?」
「それこそ、『あのよぉ』とかだったよな」
 グリエ・ヨザックが笑って言った。
「だったら俺らと同じように、『坊ちゃん』ってお呼びすりゃいいだろ?」
「……姫ではいかんのか?」
 納得するバスケスの隣で、クォードがおずおずと質問する。
「駄目だ」
「何を馬鹿なことを」
「良い訳ねーだろ」
「何考えてんだ、ボケ」
「………最後のは貴様だったな、バスケス……」


 なんのかんのと言いつつ、彼等はそれぞれ馬に乗り、ボールパークへと出発した。

「すごい……! 見渡す限り緑が続いてるわ!」
「本当に……見事だ……!」
 ボールパークに向かう、なだらかな丘陵地帯に伸びる道を行く一行から感嘆の声が上がった。
「なあ」バスケスが不審げな声を出す。「ここは確か、草原じゃなかったか? いつの間にか、えれぇでかい草が生えるようになっちまったんだな?」
 確かに、見渡す限りの一帯には、高さはユーリやアリーの胸ほど、茎も太く、葉も大人の掌ほどの大きさがある、若木と呼ぶには貧弱だが、草と呼ぶにはあまりに巨大な植物が群れを成して生えていた。
「バーちゃん、これは雑草じゃないよ。わざわざここに植えたんだ」
 ユーリが笑って応える。
「植えた?」
 そう、とユーリが馬上で頷く。
「これ、ひまわ、じゃない、ミツエモンっていう花なんだ! 今はまだ蕾もないけど、夏になったらあのてっぺんに、まっ黄色の花が咲くんだぞ。それもおれの顔よりでっかい花が!」
「ホント!? 顔より大きな黄色い花? これ全部!?」
「そう! 想像してみてくれよ。真夏の青空の下、緑の草原一面にでっかいまっ黄色の花! 何か、すごくない? キレイだって思わない?」
「綺麗というか……きっとものすごい迫力だろうな……」
 どんな形状の花かは分からないが、顔より大きな花が辺り一面を覆うとなれば、かなりの迫力があるだろうとカーラは思った。
「夏の象徴、太陽の花と呼ばれているんだ。満開になれば、惚れ惚れするほど美しい光景を目にすることができるぞ」
「僕も初めて目にした時は、その規模と、あまりに鮮やかな色とに愕然としたな。実に創作意欲が刺激される光景だった」
 コンラートが得意げに、その後を受けてフォンビーレフェルト卿がしみじみと言う。
「どんなものか想像もつかないが……目にしてみたい気がするな」
「私も! 見渡す限り、そんな大きな花が咲いているなんて、ぜひ見てみたいわ! ……だって、お花なんてあちらではあんまり目に出来ないし……」
  「夏にまた来てよ!」
 ユーリが振り返り、後ろに続くアリー達に満面の笑顔で言った。
「その頃には友好条約だって話が進んでるだろうと思うし。眞魔国リーグもあるし! な? また夏に皆で来ればいいよ!」
 夏になれば。
 私達は、私は、もっと成長できているだろうか。


 すごーい!
 すぐ隣から、妹の歓声が上がる。
 カーラも長い息を吐き出して、目に映る光景にしみじみと顔を巡らせた。

 やがて見えてきた巨大な建造物。その正面広場に馬を繋ぎ、広い階段を登った先にその光景はあった。
「ここが……眞魔国、王立球場……!」

 白い幾何学模様のような線が描かれた広大な広場。その中を走り回る、おそらくは野球選手達。
 広場があまりに広いので、同じ服装に身を包んだ彼等の姿はあまりにも小さく見える。
 そして、その広場を高い位置でぐるりと取り囲むように、緩やかなすり鉢状の観覧席が設置されていた。ぎっしりと並ぶ座席はすり鉢の半分ほど、残された上部半分は自然な芝で覆われている。

「結構たくさんの人が観にきてるんですねっ」
 アドヌイが興奮を隠さない声を上げる。
 彼の言う通り、観覧席は8割方人で埋まっていた。芝の部分にも敷物を敷いた人々が大勢、思い思いに座っている。
「これだけ広い芝生だから子供達にも良い遊び場だしね。遊びにくる家族連れも多いんだよ。もちろん皆、野球が大好きなんだ!」
 ユーリの説明に、アドヌイもゴトフリーも、それからアリーも「すごいすごい」と声を上げ続けている。
 あちらへ行こうと誘われて向かった先は、「ここが良く観える」とユーリお勧めの芝生の一角だった。すでに何人もの人々が敷物を広げ、輪になって飲食を楽しんでいる家族らしい集団もかなりの数見受けられた。
「……あ、あの、姫……あ、いや、その……」
「何? おっさん」
 おずおずと呼びかけるクォードに、ユーリが気軽に答える。
「その……貴賓席に向かわれるのでは……?」
「阿呆」
「マヌケ」
「状況を考えろ」
「ボケ」
「………ぐぐ……バスケス、だからどうして貴様まで……」
「貴賓席もないわけじゃないけど、それはホントに公式行事の時しか使わないんだ。眞魔国リーグの開会式とかさ。今日は確かに公式行事だけど、魔族の民の普通の姿を見ることが重要だろ? だからおれもこんなカッコでいるわけだし。今日は魔王でも閣下でもなく、ふつーの一般市民として行動するからそのつもりでいてよね!」
 ユーリがにこやかに説明する間に、グリエとクラリスの2人がその場に大きな敷物を広げ、持参の荷物の中から色々と小物を取り出している。

「さあ、座って座って! 今日は眞魔国代表チームと、眞魔国陸軍王都警備大隊消防救助部所属くーるふぁいたーずの練習試合なんだ。代表チームはカヴァルゲート代表チームとの友好試合を控えての調整って感じだね。くーるふぁいたーずは王都にいくつかあるチームの中でも最強クラスのチームで、もちろん代表選手も多く出しているんだ。だから主力選手は代表チームに入ってるんだけど、もともと強いチームだから、きっと面白い試合になるよ!」

 クォードと、それから今ひとつ野球に詳しくないカーラだけが良く分からずに首を捻っているが、アリー達は熱心に頷いている。

 とにかく観せてもらおう。
 カーラは敷物に腰を下ろしてそう考えた。

 新連邦代表団の半数による、文化交流が開始された。


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……公約破り、その2、でした。
野球に行き着きませんでしたっ!
本当は、夜会はさらっと流すはずだったんです。「夜会を終えた翌朝〜」ってかんじで、さらっと。
まあ、私にそれができるくらいなら、苦労はしないんですけどねー。

書きたいテーマは作中にいっぱいあるのに、全然それに行き着かないのが悩みのタネだったり。
もう7話。いったいどうなるのやらさっぱり先が見えませんが、とにかく進みます。
退屈される方もたくさんおいでになると思いますが、お付き合い頂けますと嬉しいです。

ご感想、お待ち申しております。