「それで姫様、このような朝早くから如何あそばされました?」 どうしてこうなるのか良く分らないんだが、とにかく俺達一行とツンツン姫は、四阿の卓を囲んで座っている。 俺達とマリーア姫が顔を合わせて間もなく、イザーク爺さんとスーヴェルフェミナ、スーちゃんがあたふたとやってきた。さすがにお姫様が朝から来るのは珍しいんだろう、2人とも顔が引き攣っている。 爺さん達が来てくれたんで、これ幸いと俺達は退散しようとしたんだが、なぜかお姫さんから「お前達もここにいなさい」とご命令されてしまった。 突っ放すのは簡単なんだが、あまり面倒は起こしたくない。ルルド家に世話になってる以上、フォンロシュフォール家関係で迷惑も掛けたくない。無言のまま顔を見合わせた俺達は、同じ思いを目で確認し、まあつまるところ全員で卓を囲む状況になってしまったわけだ。 お姫さんがフレデリックという従者を背後に立たせているので、俺達の方も一緒に席に着くわけにはいかない。ということで、坊っちゃん達年少組3人が椅子に座り、俺とカクさんは坊っちゃんの後に立っている。スーちゃんがえらく気にして別の席を用意してくれようとしたんだが、気にしないでくれと断った。大勢の他人と一緒に暮らしてきたからじゃないかと思うんだが、この子はホント、色々と気配り目配りをしてくれる娘だ。 「別に、大した理由はないわ」お姫さんが爺さんに答えた。「ただ、この無礼者達が爺やスーに面倒を掛けているのじゃないかと心配になったの。それと、一晩経ったらこの者達も反省して、私に対して謝罪したいと考えているんじゃないかって、ふと思いついたのよ。だったらそれを受けてあげるのが上に立つものの礼儀じゃないかと思って」 「謝罪するって、何を?」 「……あなたね…!」 ミツエモン坊っちゃんの実に素直な疑問に対し、お姫さんがムッとした顔で、大きく息を吸い込んだ。 「本当に礼儀を知らないのね! 礼儀だけじゃないわ、常識を知らなさ過ぎるわ! いいこと? フォンロシュフォール家は十貴族、この国の頂点に位置する家よ?」 「この国の頂点は魔王陛下だよ?」 ケンシロウ坊っちゃんがすかさず口を挟んだ。お説教の腰を折られた姫さんが、ウッと鼻白む。 「魔王陛下と! 魔王陛下をお支えする十貴族が頂点に立っているのよ!」 「それも違うけど、ま、いいや。話が進まないしね。で? だから何?」 だから何って……。繰り返すお姫さんの拳に力が入る。何なんだろうなー、言い負かせると思ってんのかな? どうせまた苛められるのが分かってると思うんだけどねえ。避けるなら分かるが、何でまた朝っぱらから押し掛けてくる? 苛められるのが好きってわけでもないだろーに。 姫さんには分らなくても、こいつならちゃんとその辺りが分かってるんじゃないか? と思う従者のフレデリックは、なぜか澄ました顔のままで立っている。 こいつが俺達を警戒しているのは分かっているが、それにしても……と内心で首を捻ったところで、姫さんのお説教が再開された。 「どういう理由があろうと! ロシュフォールの当主の娘を不快にさせて、そのまま知らん顔なんて許されないというのよ! あなた達がどう考えようと、私が不快だと言ったら謝りなさい! 私を不快にさせるということは、フォンロシュフォールを不快にさせるということよ。この国の何者であろうと、フォンロシュフォール家を怒らせて無事でいられる者などいないわ。尊い身分の者を畏れるということを学びなさい!」 「……姫様、いい加減になされませ…!」 「爺!」 キッと爺さんに向き直った姫さんが、ハッと息を呑んだ。 それもそのはず、爺さんの表情はあの、長年の修行に培われた誇りと気概を土台に持つ、偉大な職人の厳しい顔だったからだ。父親の身分1つが頼りの小娘なんぞに敵うわけがない。 「こちらにおいでの皆様はスーの命の恩人。我らルルドが心よりお持て成しいたす所存の大切なお客様です。そのお客様に対し、例え姫様であろうと、その身分を盾に理不尽なことを仰せられるのは許しませんぞ」 ゆ、許さないって、何よ……。 憎々しげに呟いて見せるものの、お姫さんの声は明らかに委縮していた。 「あのさ」 そこでふいに、ミツエモン坊ちゃんが声を上げた。お姫さん、爺さん、スーちゃんが一斉に顔を坊ちゃんに向ける。 「ちょっと確認したいんだけど……。マリーアさんはさ、誰に対して何をしてほしいわけ?」 「なん…ですって……?」 意味が分からない、という顔でお姫さんが首を傾げる。 「だからさ。謝れって言うけど、それってマリーアさんに対して? それともフォンロシュフォールに対して」 「お、同じことよ!」 「違う。と思うよ?」 坊ちゃんの言葉に、お姫さんはもちろん、爺さんやスーちゃんまでもが怪訝な表情になった。 「マリーアさんに謝れっていうなら……まあちょーっとばかり意地悪だったかなーとか思うしー。特に……」 言いつつ、坊ちゃんの視線がちろりとケンシロウ坊ちゃんに向く。向けられた方の坊ちゃんは、澄ました顔で隣のウッカリ卿に「え? 何? 君、何かしたの?」と聞いている。 引き攣って目を剥くウッカリ卿とにこやかなケンシロウ坊ちゃんの様子を数呼吸分見つめていたミツエモン坊ちゃんが、諦めた顔で視線を姫さんに向けなおした。 「……でも何つーか……考えてみたら、どっちもどっちでプラマイゼロって感じだよね」 「……? ぷ? ぷらま?」 「でもさ、フォンロシュフォールって家に対して謝れって言うなら、それは違うって思うんだ」 「…どういう、こと……」 「だってさ、それってフォンロシュフォールって家の権威に対して頭を下げろってコトだろ? マリーアさんに悪いことをしたと思っていてもいなくても、十貴族であるフォンロシュフォールが怖けりゃ畏れ入って見せろってことになるじゃん。後悔してるとか、申し訳ないとか、そんな気持ちは全然関係ないんだ。あなたはそれで良いの? マリーアさんは、自分に悪いことをしたって認めて謝って欲しいわけだろ? だったら、ただ高貴な家だからってだけの理由で頭を下げられて、あなたの誇りはそれで満足するわけ? おれ、それはおかしいと思う。人が人に対して謝ったり感謝したりするのって、その人の身分や家名なんて本当は関係ないよね?」 大切なのは、マリーアさんっていう一人の魔族に対しておれ達がどうするか、だろ? いつも思うんだが。 坊ちゃんの言うことは、いつも至極真っ当っつーか素直っつーか、本当は当ったり前のことばかりだ。少なくとも、庶民の、それも底辺に限りなく近いところで育ってきた俺にはそう思える。 なのに、それを真正面から突き付けられると、誰も─それは大抵身分や血筋の高い連中だが─が一瞬息を呑む。 家の権威が己の権威と信じて憚らないはずのこのお姫さんも当然……、と、思ったら。 「………え?」 意外なモノが目に飛び込んできて、思わず声を上げてしまった。 姫さんが。卓に手を付き、大きく身を乗り出していた。そして顔を突出し、まじまじと坊ちゃんを見つめている。姫さんの顔は……。 「……キラッキラ?」 何か……輝いていた。 幼さからようやく脱しようとしている年代の、そばかすの浮いた、愛嬌があるといえばある、だが純血大貴族のお姫さんが備える「美貌」とは一歩離れたところに立っていそうなその顔立ち、ふっくらとした頬は紅潮し、大きく見開かれた目は、気分の高揚のためだろうか、瞳が輝いている。ぽわぽわの猫っ毛までが弾んで見えるのは気のせいだろうか。 そしてお姫さんは……にっこりと笑った。 不気味だ。 坊ちゃん達もそう思ったのかな、一斉に身体を引いた。 でもお姫さんは坊ちゃんが自分から逃げる(?)のを許さなかった。 両腕をぐいっと伸ばすと、ミツエモン坊ちゃんの頬に手を当て、その手で……。 ……坊ちゃんの頬っぺたをくいーっと横に引っ張った……。 「っ!? ひひゃっ!? いひゃいいひゃいいひゃ…っ」 パッと手を放すと、お姫さんは真っ赤な頬っぺと涙目の坊ちゃんににこーっと笑い掛け、そのまま席を立って庭を駆けて行った。 情けない話だが、正直予想もしなかったお姫さんの行動に、俺も隊長、カクさんも、ただ呆気にとられて全く反応できなかった。そして、坊ちゃん達と一緒になって呆然とお姫さんの背中を見送ってしまった。 跳ねるように駆けていたお姫さんは、店の扉にたどり着く寸前、くるっとこちらを向いて、それから……ベーッと悪戯っ子のように舌を出し、またもや明るい笑顔を見せると、今度こそ店の中に飛び込んで行った。 「…………」 「…………」 「…………」 「………いったい……何だったわけ……?」 坊ちゃんの呟きに、俺達は一斉に首を横に振った。だが。 「気に入られましたね」 え? と見ると、なぜか1人その場に残っていたフレデリックが、澄ました顔で坊ちゃんを見下ろしている。 一体何を? と、誰かが口にする前に、フレデリックは坊ちゃん達に恭しく頭を下げ、それからゆっくり優雅に踵を返し、そのまま店の裏口に向かって去って行った。 ひたすら呆然とする俺達。 どれだけ時間が経ったのか、沈黙の庭に突如「コホン」と咳払いの音がした。 一瞬、夢から覚めたような気がして、咳払いの主を探す。 爺さんが複雑な表情で俺達、いや、坊ちゃんを見ていた。 「……あ、あのぉ……」 「驚かれましたでしょう。いや、私も少々驚きました。もしかしたら、とは思っていましたが……」 「もしかしたらって……」 お願いがございます。 突然、爺さんが声を改めてそう言った。 「皆様方には……マリーア姫様のご友人になっては頂けないでしょうか」 呆気にとられる俺達を、爺さんとスーちゃんが真剣な面持ちで見つめていた。 □□□□□ 「姫様は、実はフォンロシュフォール家において、ある意味……孤立しておられるのです」 「孤立?」 坊ちゃん、そして俺達は思わず互いに顔を見合わせてしまった。 あの、大貴族の姫君として存分に甘やかされて育ったお姫さんが家の中で孤立? 「これは…ロシュフォールの民であれば誰でも存じていることではございますが……御領主様の奥方様は、ご長男であられるアーウィン様とその妹君であられるマリーア様の、実の母君ではございません。お二人をお産みあそばされたお方様は、マリーア様がまだ幼い頃に世を去られましたのでございます」 「……もしかして、その継母である奥方様がマリーアさんを苛めている、とか?」 「とんでもございません!」 ケンシロウ坊ちゃんの言葉に、爺さんが目を瞠って勢いよく首を左右に振った。 俺も一瞬坊ちゃんと同じことを考えたから、この爺さんの反応ははっきり言って意外だった。 「奥方様はそのような方ではございません。生さぬ仲であるから蔑ろにするなどと、そのようなことは決して……。ただ……」 言って、爺さんはわずかに眉を顰めた。 「奥方様という方はその……あまり母であることに重きを置いておられないと申しますか……。いえ、決して冷たいとか意地が悪いとか、そのようなことではないのです! ただその、一般的に申しますところの、家庭的な女性ではないと申しますか……。妻として夫を支え子を育てることよりも、お忙しい御領主様に代わってロシュフォール領内を采配することに生きがいを感じておられる、そういう方なのでございます」 「ああ、いわゆるキャリアウーマンってコトか。で、奥方様はその仕事をきちんとこなしておられるのかな?」 ケンシロウ坊ちゃんの質問に、爺さんは深く頷いた。 「はい。御領主様は十貴族として王都への行き来も多く、領地を空けられることも多いため、ロシュフォールの仕置きは実質的に奥方様が担ってこられました。この長い年月、奥方様はただの一度もその采配を滞らせたことはございません。私は下々の民の一人に過ぎませんが、奥方様の采配の確かさをこの肌身にて感じております」 「なるほど……あなたがそう仰るなら、間違いないことだと思います」 ね? とケンシロウ坊ちゃんから同意を求められて、ミツエモン坊ちゃんとウッカリ卿が同時に頷いた。 「でも……」ミツエモン坊ちゃんがそこで疑問を口にした。「そういう人がしっかり家を管理してるんなら、マリーアさんが孤立するってのは……どうなんだろ?」 最後に小さく首を傾げた坊ちゃんに、爺さんが「それは…」と視線を落とした。スーちゃんもそれに倣って眉間を曇らせる。 「奥方様ご自身は、殊更姫様を蔑ろにするような真似はなさっておられません。ただ、マリーア様を我が娘としてその胸に抱き、愛し慈しむような接し方はなさってこられませんでした。常に十貴族当主の伴侶として、主に代わって民の上に立ち、領地を采配する者として相対されたのです。姫様にとってはお父上もお義母上も、偉大なる十貴族、フォンロシュフォールの頂点に君臨するお方。お心のままに甘えることが許される相手ではありませんでした。御領主様も、若君や姫様が幼い頃は共にご旅行なされることもあったのですが、戦争の気配が近づくに連れて、そのようなことも少なくなり……。何不自由することなくお育ちになった姫君ではありますが、マリーア様は誰かに存分に甘えることも、また甘やかされることもなかったと、私は考えております。そんな姫様にできることは、偉大なフォンロシュフォールの一の姫である誇りをひたすら大切にすることだけ。姫様のあの、時に傲慢な言動を目にいたしますと、私はそれが姫様の中で捻じ曲がって大きく育ってしまったと、そのように思えてなりませんのです」 「誇りを素直に、良い形に伸ばすことができなかった。それを援けてくれる人がいなかった、ということですね?」 ケンシロウ坊ちゃんの言葉に、爺さんが「そう思います」と頷いた。だがそこで、ミツエモン坊ちゃんが何か思いついたらしく、「あれ?」と小さく声を上げた。 「……でもアーちゃ……えっと、お兄さんは妹思いだって聞いてるけど……」 ミツエモン坊っちゃんの疑問に、爺さんが「はい」と頷く。 「確かにアーウィン様は幼い頃からマリーア様を可愛がってこられました。とはいえ、アーウィン様はフォンロシュフォール家のただ一人の跡継ぎである若君です。幼い頃からご勉学などに寸暇を惜しんで勤しんでこられましたので、成長と共に妹君と過ごす時間は減ってまいったのでございますよ。それに、そもそも大家のお子というものは、ご兄妹であってもそうそう共に過ごすということがないものです。同じ屋根の下と申しましても広大な城の中のこと、お暮らしになる場所も違えば仕えておる者も違いますし……」 「そ、そういうもの…?」 坊っちゃんがチラッとコンラッド、カクノシンを見上げた。コホンと小さく咳払いして、坊っちゃんの注意を引いたウッカリ卿が何やら耳に囁いている。 確かに、家族が和気藹々と仲良く一緒に過ごしている大貴族ってのは、あんまり聞かねーな。そういう点じゃあ、むしろ隊長達三兄弟なんて、属している家がそれぞれ違う割には一緒に居る方だよな。これは意外とツェリ様の性格のおかげかも。まーお役目が繋がってるってコトもあるだろうけど。 思うところがあるのか、腕組みして顔を顰めていた坊ちゃんが、ふと顔を上げた。 「でもマリーアさんは、お爺さんとスーの二人には態度が全然違いますよね? 二人にはとっても素直っていうか…。何か理由があるんですか?」 坊ちゃんの質問に、爺さんとスーが顔を見合わせた。それから二人は揃って頷くと、ちょっとした昔話を話し始めた。 『お前がつけている、その髪飾り。私に献上することを許してあげるわ』 嬉しいでしょう? そんな顔で幼いお姫さんは年上の娘を見上げた。その時すでに、見上げておきながら上から目線という高等技を身につけていたかどうかは定かじゃない。 スーヴェルフェミナちゃん、当時60歳が、爺さんに連れられて城に上がり、初めてご挨拶したお姫様から賜った、それが最初の一言だった。 髪飾りを献上させてやると、実にお優しいお言葉に、スーヴェルフェミナちゃんはビックリ仰天し、それから凍りついた。なぜなら、その髪飾りは亡くなった父親が彼女のために細工した、いわば父の形見、大切な大切な宝物だったからだ。 『髪飾りの献上は辞退させていただきまする』 銀のお盆を差し出すようにして傍らに立ったフレデリック─これまた当時は子供だったんだろうが…きっと無愛想で扱いにくいヤツだったんだろうよ─に怯える孫を庇いながら、爺さんはお姫さんに頭を下げた。 自分が欲しいと望めば無条件に、誰でも大喜びでいそいそと差し出してくる、と信じて疑わなかった姫さんは、言われた意味が分らずポカンとしていたようだ。 『……ええと……お前の髪にあるものを私の宝飾品の中に加えてやろうというのよ? 光栄に思わないの?」 それこそが不思議だという顔のお姫さんに、爺さんは首を左右に振り、きっぱりと否定した。 『人には誰にも、決して手放すことの出来ない大切なものがあるのです。これは我が息子、亡くなったこの子の父親が娘のために細工した品。それを取り上げるような真似はお止めくださいませ』 『取り上げる!? 何を言うの? 私が気に入ったと言っているのよ? どうして喜ばないの? それに、お前達に忠誠心というものがあるのなら、どんな品であろうと喜んで献上するのが良き領民というものでしょう?』 『お父上の権威を笠に、娘から親の形見の品を奪い取ろうとすることが、尊い姫君のなさるべき良き行いでございますかな?』 『…っ! なんで、すって!?』 『私は確かにロシュフォールの民としてフォンロシュフォール家に忠誠を誓っておりまする。しかしそれは、ロシュフォールを名乗る者、誰にでも盲目的にというものでは決してございませんぞ。まして貴きお方が当然負うべき義務も、民の忠誠心が何たるかも学ばぬ子供に対してなぞ!』 『…ぶ、無礼なっ!』 爺さん達の側にはフレデリックの他、侍従や女官達も当然いて、爺さんの突然の怒りにただ呆然と立ち尽くしていたようだ。 子供相手に本気になってしまった爺さん、これは不味いと内心冷や汗を掻いていたらしいんだが、1度爆発した怒りは治まらなかった。大人気ないと言わば言え。 許さないわ! 姫さんはぶち切れた。 お父様に言って、お前の工房など潰してやる! ロシュフォールで暮らせないようにしてやる! 一族1人残らず牢に閉じ込めてやる! ……追い払いたかったのかな、それとも閉じ込めたかったのかな? まあ本人も分ってなかっただろ。とにかくお姫さんは喚き散らした。 そして最期にはお定まりの「覚えておおきなさい!」と捨て台詞を叩きつけ、お姫様は退場した。 「で? フォンロシュフォール卿は何て?」 「幼い娘のことゆえ腹を立ててくれるなとの仰せでございました。もちろん親の形見を奪うような真似はさせぬと。我が息子のことはご領主様もよくご存知でしたので、格別に思し召したのかもしれません」 「領主として、実に立派な対応だね」 ケンシロウ坊っちゃんの、分る者が聞けば分る香辛料の効いた言葉に、だが爺さんは素直に頷いた。 「娘に髪飾りを1つ、仕上げてやって欲しいと、求められたのはそれだけでございました。それでようやくスーもホッと息をついたのです。スーは自分が献上を拒んだために家に危険を及ぼしたのではないかと怖れておりましたので……」 「当時なら……どれだけご寵愛を受けていたとしても、ご領主の気まぐれ1つで民の生命財産は簡単に奪われていたはずだね」 確かに。爺さんは頷いて、わずかに目を伏せた。 「すぐに髪飾りを仕立ててご領主様に献上いたしました。その以後、しばらくは我らと姫様との接点はありませんでした。しかし、それから半年ほどしてでしょうか、いきなり姫様が私達のもとにやってこられたのです」 あなた達は嘘をつかないわね? 二人の前に立ったお姫さんは、開口一番そう言ったそうだ。 「あれは、シマロンとの戦の終盤から戦後直後の頃でございました。国難、混乱の時期です。ご領主様は十貴族として、戦の対応から終戦処理、そして国家の建て直しという仕事に没頭なされておられたのです。そのため、領内の実務は全て奥方様に任せられました。先ほども申し上げました通り、奥方様にはそのお力も意欲もありました。そして、奥方様は立派にご領主様の代理を務められました。奥方様の存在感、権威は否応なしに高まったのでございます。当然、人々の奥方様を見る目も、単にご領主様の奥方様というだけでは済まないものとなりました。そうなりますと……」 爺さんはほんの少しだけ眉を寄せて続けた。 「多くの者が、奥方様の意を迎えようと争うようになりました。私の同業の中にも、奥方様の覚えがめでたくなれば、フォンロシュフォール家御用達の銀細工師になれると考え、高価な貢ぎ物を積み重ねる者もいたようです。奥方様は媚び諂う者に振り回されるような浅はかな方ではございません。そのはず、でした。しかし……どれほど才のある方であろうと、己を賞賛する者達に囲まれれば嬉しくなってしまう。そういうものなのでしょうなあ」 「奥方様も結局そういう崇拝者っていうか取り巻きっていうか……そんなのを集めだしたと?」 「はい。そのような者達が奥方様を文字通り取り巻き、奥方様や奥方様のご実家や縁者、特に姫君方への貢ぎ物を争うようにもなったのです」 「姫君……というと、マリーア姫じゃなく」 「奥方様がお産みになった、マリーア様とはお腹の違う姫様方でいらっしゃいます。何度も申し上げますが、生さぬ仲とはいえ、奥方様は決してマリーア様に冷たく当ったり、邪険になさったり、そのようなことは全くございません。ですが……それでもやはりご自分のお腹を痛めて生んだ姫君方をより愛しいと思われるのは、これはもうどうしようもない人情と申すものなのでしょう。貢ぎ物なども、初めの内はマリーア様への気配りもなさっておられたご様子でしたが、次第にそれも御座なりになり、やがてはほとんど気になさらぬようになりました。ちやほやされた上、母上の態度も影響したのか、妹君達も姉上に対して遠慮や慎みを忘れてしまい、その悪しき雰囲気は取り巻きのみならず、ついには城で働く者達にまで及んでしまったのでございます」 「それはまた……二昔か三昔前の少女マンガの王道を地で行くような」 質問役のケンシロウ坊っちゃんが呟いて眉を顰めた。俺達も何となく互いの顔を見合わせてしまった。 「取り巻きはもちろん、ロシュフォールで何らかの利益を得ようと考える者は、奥方様に取り入るためにどのようなことでもするようです。夜会だの、名目のよく分からぬ祝いの会だの何だのを開いては奥方様や姫君方を招いたり、貢ぎ物を争ったり……。事ある毎に激しさを増すその争いは、距離を取る者からすれば目も当てられない醜態でございます。ですが、そのような者達もマリーア様には目も向けません。さすがにお誕生会だけは奥方様も気をつけておられますが、それ以外は……。いつしかマリーア様のお側には、実のお母上のご実家から送られた、フレデリック様の様な方が数人、お仕えしているだけになってしまったのです」 「フォンロシュフォール卿やアーウィン殿は、その状況に気づいておられないのですか?」 コンラッド、カクノシンが不審気な声で尋ねた。フォンロシュフォール卿はまだしも、あのアーウィンが気付いていないってのは俺もおかしいと思うんだが。 「私も、折に触れてそれとなく申し上げておりますが……。ご領主様は十貴族として、領地だけでなく国家のことも目配りなさらねばなりません。日々、大変お忙しくてあらせられます。特に、前摂政様がその座を逐われる前後はロシュフォールも動乱の時期でございまして、ご領主様はもうそれどころではないというご様子でございました」 ああ、まあ、あの時期なら、いくら余裕ぶちかましのフォンロシュフォール卿といえども、娘のことに目を向けてる暇はないだろうな。 「それに、何と申しましてもご領主様の奥方様へのご信頼は篤く、任せておけば問題ないとお考えのようです。アーウィン様も、奥方様とは特に隔意もなく、ロシュフォールの家宰についてはよくご意見を交わしておられるようでした。そのため、アーウィン様の奥方様へのご信頼、ご尊敬の念もまた深く……。マリーア様を始め、姫君方のご教育に関しましても、お母上たる奥方様にお任せしておけば間違いないと、お2人ともお考えでございました。そもそもマリーア様は、癇性で少々わがままが過ぎるご性格、という評価が定着しておりましたし……」 それで? 何となく黙り込んでしまった座に、先を促すケンシロウ坊っちゃんの声が響いた。 「彼女の背景についてはほぼ理解したけれど、それがどう繋がるわけ? その、『あなた達は嘘をつかないわね』って突然言い出したこととさ」 さようでございました。 思い出した様に爺さんが言う。 「まだ幼いながら、己の居場所をなくしつつあることを察せられたマリーア様でございますが、あまり人に構われぬ生活の中で1つの楽しみを発見されました。それはすなわち、城の中を探検し、姫君であれば紛れ込むはずのない場所に密かに入り込み、城の者達の主には見せない姿を観て回ることでございました。城の中にあります秘密の通路を発見されたのが、その切っ掛けと伺っております」 「秘密の通路って……壁に隠された扉からの脱出路とか、地下の迷路とか、そういうヤツ!?」 「幼い子供が、よく恐れもせずにそんなところに入り込んだものだな!?」 話を坊っちゃん達に任せていたウッカリ卿閣下が、そこで初めて驚きの声を上げた。やはり同じ城育ち、秘密の通路の存在や、そこに入り込むことの怖さは良く知っている。 「そこが恐れを知らない姫様ならではと申しますか……。道があるのだから、進んで行けばどこかに出る、どこに出ようとロシュフォールなのだから、領主の娘である自分に危険なはずはない。そう考えて、戻る道を確認もせずに突き進んでいったのだと。ものを知らぬとは怖ろしいことでございますが、とにかく姫様は放っておかれるのを幸いに、城の、いわば裏側を覗きこむ新たな楽しみを覚えられたのでございます」 「……『家政婦は見た』のお姫様バージョンか」 「家政婦は? 家政婦の?」 「おばちゃ……ベテランの方に決まってるだろ?」 「そっか?」 二人の坊ちゃんの分からないやり取りに、一瞬眉が訝し気に寄せられたものの、賢明にも問い返したりはせず、爺さんは話を続けることにしたようだった。 「しかし…城の裏側、すなわち人の隠された本音など、知る必要などないのです。まして……下々の民に人がましい感情があることも碌に理解しておられぬ姫君が、使用人達の本音を盗み聞きするなど……。1度誘われて、スーが一緒になったことがあるそうです。その時の話が……」 『ったく腹が立つわ! あの姫ったら! 髪留めが引っ掛かったって言うから! だから仕事の手を止めて取るのを手伝ってやったのに、何て言ったと思う? その汚いぼろぼろの手で私の髪に触るなんてどういうつもり? 無礼よ! だって! ぼろぼろなのは仕事してるからよ! 一生懸命働いてきた手よ! あの人たちのために働いてるのに、汚いなんてあんまりよ!』 『姫って、マリーア様? あの性悪姫、仕えてる者の苦労なんて砂粒ほどにも感じちゃいないわ』 『あたしたちのことを、自分と同じ魔族だなんて考えてもないのよ。そんなこと口にしてごらん? 絶対あたしたちのことを無礼者呼ばわりして、下手すりゃ牢に放り込むに違いないわ』 『おい! 何を無駄話してる!? その貴族が俺たちに給料を払ってるんだ! 喋くって仕事をさぼってるんじゃないぞ! それに! 姫様のことを汚い言葉で罵るな! 俺達は他のどこでもないフォンロシュフォール御本家に仕えているんだぞ。その誇りを汚すような真似をするな!』 『……おお、こわ。何よ、あいつ。はん! フォンロシュフォール御本家に仕える誇りだって? 下働きが被ってんのは誇りじゃなくて埃よ!』 『あっはっは。上手いこと言うじゃない、あんた。それにしても、ま、あのマリーア様が性悪ってのは本当だよ』 『でもまだ子供じゃないのさ』 『子供のくせしてあの我がままっぷりだよ? 将来はもっとひどくなるに決まってるさ。奥方様だって見離してるくらいだもの』 『あんた、そりゃ違うわよ。奥方様は見離してるんじゃないわ。むしろ、マリーア様の評判が落ちるのを喜んでいらっしゃるわよ』 『え? そりゃまたどうして?』 『だってお腹を痛めた可愛い姫が、もう二人もおいでになるのよ? 二の姫、三の姫の将来を考えたら、ねえ?』 『だからどうだってのよ!?』 『ロシュフォール本家には、アーウィン様って跡取りの若様がちゃんとおいでになるじゃないさ』 『そうね』 『そうよ』 『だから姫様達には、お婿をもらってロシュフォール本家を継ぐって未来はないわけよ。いずれはお嫁に出なくちゃね』 『まあ…そうよね?』 『でも仮にもフォンロシュフォールの姫でしょ? やっぱり嫁ぐ先は選びたいじゃないの。奥方様が願っておられるのは、もちろん十貴族本家の跡取り息子よね?』 『そりゃそうよね』 『それ以外は、確かに格落ちって感じよね』 『あらでも、マリーア様はグランツの分家の若様と婚約してなかった?』 『御領主様とグランツの分家の誰かが親しくしていらっしゃったからよ。でもほら、あのグランツの跡取りが謀反人になったことで婚約破棄になったわ。……奥方様は残念に思ってらしたらしいわよ? だってマリーア様を押し付けるにはちょうど良い相手だもん。一生懸命取り成してたって話だし』 『へー、そうなんだ。結構いろいろあんのね、上の方も』 『マリーア様には適当なところを宛がっておいて、二の姫様と三の姫様には十貴族の跡取りか、ダメでも大貴族の跡取り息子を、ってのが奥方様の腹の中さ』 『なーるほどぉ!』 『お婿の候補も数は限られてるもんねえ。いくら十貴族の跡取りだって、年が離れすぎちゃダメだろうし』 『そういうことよ。さっき、あたしらの給料はフォンロシュフォールが払ってくれてるって言ってたけど、実際払ってくれてるのは奥方様だもんね。奥方様の心証を悪くしちゃ、どんなに一生懸命働いたってあっという間にお払い箱さ』 『そうそう。あたしらは奥方様にお喜び頂けるように働く。それで良いのよね?』 『ああ、そうとも。だからマリーア様が何を言ったって、はいはいって聞き流しときゃ良いのよ。あのお姫様に嫌われたってどうってことないもの。奥方様にさえ気に入ってもらえればね』 『そういうことね』 『そういうことさ』 「………情けなくも、恥ずかしいことでございます……」 そう言って、爺さんは長々とため息をついた。 「こんな話が姫様のお耳に入ってしまったことに驚いて」そこでスーちゃんが話に入ってきた。「私は思わずその場に座り込んでしまいました。そしてドキドキしながら、すぐ傍に立っておられた姫様のお顔を見上げました。きっとものすごく衝撃を受けておられるだろう、呆然としておられるか、怒りに震えておられるか……。でも、姫様のお顔は、厳しくはありましたけれど、なぜかとっても冷静でいらしたんです。私、そのことに逆に驚いて、うっかり姫様のお顔をまじまじと見つめてしまいました。そうしたら姫様が気づかれて……」 『……私が怒って喚き散らすとでも思った? 大丈夫よ。こんなの初めてじゃないわ。私、城中に張り巡らされている通路をたくさん探検したのよ? 色んなところに出て、下々の使用人達が私たちの前では決してみせない態度を目にしたし、会話も聞いたわ。それこそ……本当に色んな話を聞かされたわ。最初は驚いたけど、でも……もう慣れたもの』 私、嫌われてるのね。 「通路から姫様のお部屋に戻って、最初に仰せになったのがこの一言でした。私、どうお答えしたら良いのか分からなくて黙ってました。そしたら」 『でもね、スーヴェルフェミナ。あの女の手は本当に気持ち悪かったのよ。指先が妙に太くて変な形で、皮が全部めくれてる感じで、爪も歪で黒かったし……。あんな風に言うなんて、あの女は許しがたい不届きものだわ。そう思わない?』 『姫様、私の手をご覧ください』 『……え』 『指先、太くなっているでしょう? それに爪も、短く切っていますが、やっぱり歪んでます。指先の皮だってめくれて白くごわごわとささくれ立ってます。あの人たちと同じです。姫様みたいなすべすべした白い指じゃ全然ありません。でも私、恥ずかしいなんてちっとも思いません。気持ち悪いなんて絶対思いません。だって私のこの指は、働く者の指ですもの』 『……働く者…?』 『そうです。あの人も言ってたでしょう? 真面目に、一生懸命働くから、手だって荒れるんです。私はお掃除も洗濯も料理も手伝います。それから、まだまだ始めたばかりだけど、銀細工も習ってます。水もたくさん使うし、手に力を入れないとならないし、頑張れば頑張るほど手が荒れるんです。冬なんか、指先が割れるんですよ? 血が出て、そりゃあもう痛いんです。だけど、真面目に働く者なら皆そうです。あの人も、決して不届きものなんかじゃありません。仕事を一生懸命しているから手が荒れているんです』 『わ、私のことをあんな風に……』 『陰口なんて誰でもやってることです。どんな忠義者だって、不平や不満はあります。人ですもの。犬猫じゃないんです。当たり前のことです。それを咎められたら、皆息が詰まってしまいます。どこかで感情を吐き出して、すっきりして、そしてまた一生懸命働くんです。それをわざわざ盗み聞きするなんて……』 『ぬっ、盗み聞きですって!?』 『盗み聞きです! それ以外、何て呼ぶんですか!?』 『ぶっ、無礼だわ! 出ていきなさい!』 『ええ、出ていきますっ!』 「お爺ちゃんに全部話して、これからお城に伺うのはお爺ちゃん1人に任せよう。そう思って家に帰りました。でも、数日して、今度は姫様が私の家に突然おいでになられたんです。そして私とお爺ちゃんの前で……」 『あなた達は嘘を言わないわね?』 『……それはどういうことでございましょうかな、姫様』 『あれからずっと考えていたのよ。ああでも、私が悪かったなんてやっぱり思えないわ。だって私、誰がどう考えようが、誇り高きフォンロシュフォールの一の姫ですもの。下々の者の考え方なんて理解できなくて当然よ』 つんと顎を上げて、姫さんは宣った。 だがその後、ほんの少しだけ表情が変わった。 『ただね、あれから城の者の様子を観察していたのだけれど、やっぱり何も変わらないのよ。皆、私の前ではさも忠義者って顔で諂って、ちょっと叱ったら、それこそ今にも命を絶ちそうなくらい恐縮してみせるの。でもその後できっとまた私の悪口を言ってるのよね。心底から悪かったなんて少しも思わずに。でも……あなた達は違うわ』 あなた達は正直よね? 私に嘘は言わないわよね? 「おそらくは、あの髪飾りの一件から始まり、スーの態度まで、姫様の脳裏に刻まれてしまったのでしょう。姫様のお言葉に昂然と逆らった、言うなれば本音でぶつかった唯一の存在として……。以来、姫様は我らをご信頼下さり、今日に至っては私を爺と呼び、スーとは姉妹のように振る舞われるようになったのです」 はあ……なるほどねえ。 あの我がままお姫様にも、それなりの体験とそれなりに思うところはあったってことか? けど……そこはかとなく何かがズレてる気もするんだけれど。 「じゃあ、さ」ミツエモン坊ちゃんが小首を可愛らしく傾けながら言った。「あの、おれ達への態度って、言ってみればその……テスト、試験、なわけ?」 信頼できるかどうかの? どこか不得要領な表情の坊ちゃんに、爺さんが目を伏せた。 「そう…とは申せますまい。姫様はフォンロシュフォールの一の姫であることを何よりの誇りとしておられます。それだけが姫様の矜持と申しますか……。下々の者と馴れ合うなど、姫様のその矜持が許さぬと考えます。ですが……」 姫様はずっと待っておられたのだと思います。 爺さんは目を伏せて、絞り出すようにそう言った。 「おそらくは、ご自分でも自覚なさってはおられませんでしたでしょう。周囲の者を誰も信じず、故にますます傲慢に振る舞われながら、心の奥底で、本音で自分とぶつかってくれる人物が現れることを願い、待ち続けておられたのだと思うのです。そこに……あなた方が現れた」 爺さんが目を開き、俺達をぐるっと見回した。 「先ほどの姫様のお顔。これまで目にしたことがないほど輝いておられました。ご自分でも分からないながら、心底嬉しかったのだろうと思いまする。ですから……お願いいたします。どうか!」 姫様のご友人になってくださいませ! 爺さんとスーちゃんに揃って頭を下げられてしまった。 俺は、もちろん隊長、カクノシンやケンシロウ坊ちゃん、ウッカリ卿もだが、即座にミツエモン坊ちゃんに視線を向けた。決めるのは坊ちゃんだ。 「うん。良いよ」 即答。 うん。ま、坊ちゃんだもんなー。 「しかし……」カクノシンが一応のだめを出す。「姫君は我々と友人になりたいと願われるでしょうか?」 「そ、それは……」 「なれるさ」 坊ちゃんの声は軽やかに明るい。 「あの時のマリーアさんの笑顔、本当に嬉しそうだった。本音でぶつかりあえるなら、おれ達ぜったい良い友達になれるよ。それに……」 ツンデレなら慣れてるし。 隊長、ケンシロウ坊ちゃん、そして俺の3人が、一斉に吹き出した。 爺さんとスーちゃんはポカンと俺達を眺め、ウッカリ卿ことヴォルフラム閣下は「……何を笑っている……!」と、絞り出す様な不機嫌な声を上げている。 ……以前、坊ちゃんに意味を教えてもらっておいて良かった。 閣下には申し訳ないが、やっぱりこういう時は坊ちゃんと一緒に笑いたいもんな。 後は……あの「つんでれ」お姫さん次第ってワケだ。 プラウザよりお戻り下さい。
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