rain

窓にポツリと付いた雫が徐々に塊りになって流れていく。
日暮れから降り出した雨は遠くの木々をそのカーテンに隠してしまい普段なら明るく 光る眞王廟の灯りさえも滲むように霞ませている。
遠くで鳴っている雷の音も激しくなる雨の音に負けてしまって鈍く轟くのみ。
就寝前にいつもの見回りをと、部屋を出て中庭に差しかかったところでありえない影 を見つけて立ち止まった。

   漆黒のその髪から滴り落ちる雫は白くまろい頬のカーブを通り、細くとがった顎から なめらかな首筋にと途切れることなく流れ落ちる。
雨の中へと佇むその姿はまるで水墨画のように美しかった。

「…何を、しているんですか」

問うその声さえも届かないのか身動き一つしない。

「ユーリ」

名前を呼んだその声にかすかに肩が震え、ゆっくりとこちらを振り返ると暗闇の中そ こだけ浮かび上がる鮮やかな唇をいたずらが見つかった子供のようににやりと笑って 見せた。


「知ってた?一年に一度のその日一日にしか逢えない恋人たちがいて・・・でもその たった一日に雨が降ってしまうとまた来年まで逢えなくなるんだ」

そういって、その手を天に伸ばす。

「雨が降ると逢えないんだよ。寂しいな」

まるでその恋人たちが自分たちのような気がして、そのままユーリが向こうに帰って しまうんじゃないかと思わず抱きしめていた。

「ユーリ」

名前を呼ぶ声すらも掠れてしまう。

「なあ、コンラッド」

きつく抱きしめた腕を、大丈夫だよとでもいうように、軽くトントンと叩きながら彼 は言った。

「でも、でもだよ。どんなに激しい雨が降ってたとしても、厚い雲の上では晴れてい てきっと星が輝いているよな。だったらさ雨が降っていても関係なくないか?」
「えっ?」
「星の恋人たちの話なんだ」
「星の…?」
「うん。それにさ……」

 俺には雨が降ってても見える星があるからね。



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『Innocent』の小春びより様より、七夕にちなんだエスエスを頂きました。
小春びより様からは、『うちのユーリは男前ですが、コンは何故かへたれてます。愛はあるんですよー。』とのコメントを頂きました。

私はホントにイベントに合わせたSSを書くというのが、とっても苦手だったりするのです。
ネタを考えるのに時間が掛かって、思いつく頃にはその時期が過ぎてたりとか。
それに……私が七夕ネタで何か書き出した場合、書き終わる頃にはお盆がきている可能性がなきにしもあらず、とか………(泣)。

小春びより様のおかげで、私のサイトにも季節にふさわしいSSがアップされました。
小春びより様、本当にありがとうございました〜〜〜っ!!

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